Takahiro Izutani

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超初心者に戻ったつもりで勉強し直してます。

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いま恥ずかしながら超初心者に戻ったつもりでAbleton Liveをいちから勉強してます。実は自分はLIve 3からのユーザで以前からライブパフォーマンス用には使っていたんですが、今後は制作用のメインDAWにしようと考えています。長年Logic Proで作曲してStudio Oneでミックスするというスタイルを続けていましたが、Logicはもうコンセプトが古過ぎる上に追加されていく機能が建て増しの温泉旅館の様な非効率なもので、作曲時に新しい発想を喚起するには全く向いていません。ジワジワとLogicへのストレスが溜まっていたおり、いま自分が注目しているエレクトロニック系アーティストはほとんどがAbleton Liveユーザだと知ったので、試しに制作用として久々に使ってみたところ、色々と昔は使いづらいと思っていたところがほとんど改善されている上に、直感的に曲作りするという点において圧倒的に柔軟性が確立されているとわかってしまいました。

一般的なDAWが横スクロールでリージョンを置いていきながらオートメーションデータを書いて行くことを前提とした思考を求めてくるのに対して、Ableton Liveではセッションビューとアレンジビューの連携ができることによってその縛りがないことと、Audio To MIDI機能の進化によってMIDデータ、サンプル、録音した演奏データの境界線もなくなっています。全ての選択肢から最適なものを直感的に選べるようになり、素材の種類の境界線がなくなったことで、逆に制作者に極度に思考力、選択力、決断力を求めるDAWに進化しています。オリジナルなアイデアを積み上げていくにはもってこいでしょう。これはもはやいわゆるDAWと言うよりも超高性能な単体のサンプラーとすら言えると思います。

そしてJon Hopkinsの以前のインタビュー記事での言葉がダメ押しになりました。
"[Logic is] like working in a very small courtyard, whereas Ableton is like this big massive playing field. It's almost as if you can't see the boundaries. 

このMax CooperのライブではAbleton Liveを立ちあげたラップトップからのサウンドを演奏しながら、Max for LiveからはResolume(VJソフトウェア)が立ちあげられた2台の別のラップトップにMIDIメッセージを送って制御しています。

Dugo - 'Dawn' (Official Video)


芸術? ビジネス? 村上隆氏の「芸術起業論」を読んで。

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6月に入りましたが今月は久々となるDugoの新作EPのリリースがあります。来週にもお知らせできると思いますので是非ともご期待ください!

さて最近はあえて日常的に読書する時間を習慣的に作るようにしているのですが、色々と読んだものの中でも特に10年に一度と言っていいくらいの感銘を受けた村上隆さんの「芸術起業論」とその続編の「芸術闘争論」それと「想像力なき日本」についての書評を書いてみようと思います。

まず第一に世界の現代美術業界においては村上氏は数少ない日本人として評価されている作家であり、なぜ自分がそのような状況を築けているのかというと「欧米の現代美術界のゲームのルールに沿って闘っているから」だというのです。

「芸術にルールなんてあるの?心の思うままに自由に表現するのが芸術なんじゃないの?」と素人は思いがちですが、西洋美術界には括弧とした歴史と、それに準じた芸術のコンテキストとルールがあり、それを踏まえた上で批評性、ルール破り、そして新しいゲームの提案があるかどうかが評価の対象になっているというのです。そして作品の価格の推移はマーケットの意向次第であり、作品の出来不出来には全く関係ないというのです。マーケットの思惑次第である以上、作品に紐付いた何かしらの複合的なコンテキストであったり、ストーリーであったり、単にサプライズや意外性ですらも価格に反映していきます。

そして日本の現代美術界は全くこのようなことを理解しようともせずに、自国内での美術予備校、美大や芸大の権威、その権威に迎合して授業料を納める学生、つまり次世代の権威予備軍、それらの循環によるエコシステムであり、門外から西洋美術をパクったり、批判したり、憧れていたりするだけのものだと断罪しているのです。

自分が特にこの話に興味を持ったのはこれが音楽業界にもそっくりそのままあてはまると思ったからです。インターネットのストリーミングが音楽産業のメインになって以来実質的にCDやダウンロード販売がメインだった時代とは競争や評価基準のルールが根本的に変わっています。システム上のルールが変わったことで音楽家の活動形態や評価基準も変わったのですが、世界中の同業者と全く同じSpotifyというフォーマットで闘うことになって初めて西欧諸国の実態が見えてきたのです。

以前は日本語で書かれたメディアか日本語に翻訳されたメディアの情報だけを踏まえて世界の音楽事情だと思っていたものが、ほとんど氷山の一角でしかなかったとわかってしまいました。そして彼ら西欧のアーティストのプレゼンテーションスキル、そしてその方法の多彩さと誠実さを知り、以前はうっすらと日本とも繋がっていると思っていた世界が完全に隔絶したものだと知りました。

加速度的に日本国内市場がシュリンクしていく今の状況においては自分の様な零細音楽家も今後はグローバルのマーケットで幾分かのシェアを獲得すべくゲームのルールを知った上で闘う必要があります。実際にグローバルな戦場で勝ち残ってきた村上氏の一言一言が凄まじい説得力と重みをともない、1ページごとにうんうんと強く頷きながら読み進めていきました。


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画像は昨年見に行った森美術館の「STARS展」より


こちらの動画では森美術館と関わることになったきっかけの話が特に興味深かったです。

大量のアウトプットを生むための過去ストック活用法



Dugoのニューシングル"Gleam In The Deep Sea"が4/29にSpotifyでリリースになります。

こちらはSpotifyリリース前のプリセーブ用のリンクになります。

今回のトラックは実は10年以上前にとある映像作家の方とのコラボレーション用に制作したものが元になっていて、それを今のツールと今の音楽性で大きく刷新して再構築しています。かつては昔の素材やアイデアを使い回すようなことには抵抗があったのですが、いまは自分が何らかの形で制作してきたものは未完成のもの、断片、音色のデータまで含めて全て資産だととらえているので今後も積極的に活用していこうと考えています。

かつて聞いた話では、スティール・パン奏者で前衛音楽家のヤン富田さんは数万枚のレコード、CDコレクションから任意の楽曲がどこに収録されていてどこに収納されているかを瞬時に見つけ出せるようにして「使える知識」として管理していたそうです。同様に制作に関しては過去のアイデアの断片を瞬時に引っ張り出してきて再構築できるように脳内とストレージ内を管理しておくことが大量にアウトプットしていくために必須だと考える様になりました。若さを失うのと引き換えに得た「積み上げた知識と経験の資産」こそが自分のオリジナリティの源泉として強力な武器になると実感しているからです。

過去の資産の有効活用ということで言えば、近年では音楽活動上も同様の変化が起こっています。現代の音楽活動の主流がCDなどのフィジカルなリリースからストリーミングサービスやソーシャルメディアでの投稿によるネット上のプレゼンスに重きが置かれるようになってから、パッケージ製作、流通、プロモーションなどにかかるコストは激減、もしくは限界費用ゼロにまで下がりました。そんな誰でもが同等に音楽活動ができる状況下ではアーティストはとにかく潜在的なオーディエンスの目に触れる機会が重要であり、リリース量や制作物の質、その方向性を制限して管理する意味がなくなっています。いわゆるロングテールの戦略をとって過去の資産も最新のものと同等に扱い、いつどんな作品がバイラルになってもいいようにしておけばいいのです。

また音楽ジャンルの多様化や、古いものと新しいものが完全に同じプラットフォームで同居できるようになったことで、何が最新の音楽で何が時代遅れなのかという区分けが消滅し、最新の音楽を知っているということに対するスノッブな選民思想も過去のものになり、個々のアーティストがクールかダサいのかはその活動スタイルに大きく依存するようになっていると感じます。

その指標となるもののひとつに作品の発表の場として何を重視するかということがあります。ライブをメインにするというのはCOVID-19以降はほぼ不可能になりつつありますし、事態が終息したあとでも何かしらの制限がついてまわるはずです。ヴァイナルの販売やマーチャンダイズがメインというのもひとつの手でしょう。自分の場合はInstagramの各種投稿とSpotifyでのリリースを圧倒的に重視しています。Instagramでは短い動画付きでちょっとしたサウンドロゴや数十秒の楽曲をアップしていますが、それもオーディエンス獲得のためのゲートウェイとして注力し、手間と時間をかけて制作しています。そして見せ方を変えたりしつつ段階的に尺の長いコンテンツにつなげていき、最後にSpotifyがランディングページとなるようなイメージで導線を作っています。ここの個人ウェブサイトを作ったときに実はその様な用途で色々なコンテンツの発信の場として機能するようにするプランもあったのですが、当時はまだそのような考え方は一般的ではありませんでした。今の様にユーザが共通のプラットフォームでコミュニケーションをとれるようになって初めてワークするアイデアだったかもしれません。

さて、昨年の10月にDugoの活動再開となる"Recluse EP"をリリースして以来ほぼ7ヶ月が経過してようやくSpotifyの月間ユニークリスナーが15000人を超えるところまできました。まったく先が見えないままでひたすら制作を続けて可能性を探るのはなかなかきつかったのですが、あと少しでデータを見ながら戦略をうてるくらいの数字に達することができると考えています。またもうすでに次回リリース予定のEPの制作が佳境に入っているので、近いうちにそのこともお知らせできそうです。どうぞご期待下さいませ!

予算をかけずに個人でもできるオンライン音楽マーケティング

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Interview on Indie Top 39 by Emma MIller
こちらはUK発のレビューウェブサイトIndie Top 39に掲載された最新のインタビュー記事です。


久々となったDugoの新作EP Recluseのリリース後、もろもろのプロモーション活動も一段落したのでここで総括してみようと思います。

今回はレーベルからでなく完全に自主でのリリースとプロモーションになるのでまずは自分のマーケティングに関するリテラシーを高めることと、いかに予算をかけずに各所にとりあげてもらうかということにポイントをしぼって進めました。

オンラインでのパブリシティというのは紙媒体と違って一度アップされると理論上は半永久的にでもネット上に存在しえることが可能です。なので今後も活動を続けていく上で認知を広げていく際には必ず誰かに過去情報が検索されることになるので、しっかりとした中身のあるものを提示しておく必要があります。一回こっきりアップした時にだけ周知をして読まれれば良いというものではなくロングテール的な姿勢で少しづつコンテンツとして積み上げていくことで目に留まる頻度を高めていくべきです。

個人からでも請け負ってもらえるプロモーション会社は色々とありますが、今回は費用がさほどかからず手軽に使えるウェブ上のサービスを試してみましたのでいくつかご紹介します。今回掲載された記事の中から主要なものは https://dugo.tokyo/ に引用してありますのでご覧になってみて下さい。

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これは巷では最も知られたサービスだと思いますが、元々はGoogleで働いていたプログラマーが独立して立ち上げたという如何にもドラマ「シリコンバレー」に出てきそうな会社で、最初にポイントを購入したのちサイトのリスト上に掲載されているメディアの中から自分が気に入ったものにオファーを送り先方が楽曲の内容に対して気に入ってくれれば記事やインタビューとして掲載されることになります。ここの特徴としては音楽のジャンル、影響力の評価、採用率、抱えているオーディエンスの総量など様々なパラメータが比較できるように数値化されていて、それをフィルタリングして自分にとって最適と思えるメディアを選べるところです。またレビューサイトだけでなく、個人ブロガーやInstagramのインフルエンサー、Spotifyのプレイリスター、果てはSoundCloudでのリポストなど様々なツールを介してのメデイアがあり、今回自分が取り上げてもらったものの中では世界中の山岳地帯を旅している冒険家のInstagram Storiesの映像のBGMとして取り上げてもらったりというものもありました。おそらくTikTokからみでのインフルエンサーなども多いでしょうし、昨今は数年前までは思いもつかなかったような場所ですら大きな影響力を発揮しているひとがいることがわかりました。

あとSubmitHubは採用率がなかなか厳しかったのと、自分の場合は試聴してもらうのと同時に不採用の場合も必ずその理由をレビューしてもらえるコースで提出していたのですが、これは最初はメンタルがやられそうになりました。普段仕事で制作している楽曲であれば、どんな理不尽な不採用や意味不明なリテイクであっても何の動揺もなく機械的に対処できるのですが、いざ自分の音楽として作った楽曲によくわからない理由でダメ出しされることがこんなに精神的にこたえるとは思わなかったです。これはとてもいい経験になりました。

こちらもシステムとしてはSubmitHubと同じ形式ですがリリースする楽曲を提出してパブリシティとして扱ってくれるメディアを募るという一種のお見合い的なプラットフォームです。こちらの方がおそらく新しくできたサービスで、それゆえか比較的個人ブログなどを含む小規模のメディアからかなり多くのオファーをもらいました。またここはリリース期間内に全くオファーがもらえなかったとしてもここのサービスからの紹介で必ずいくつかは記事が掲載されるという最低保障の様な制度があるようです。

こちらは少し名が通ったメディアやレーベルをメインにしたサービスです。ジャンルや国別のフィルタリングがとても使いやすいのと、自分が気に入ったものをみつけたら個別にアプローチできますが、名が通ったものに関しては楽曲を聴いてもらうだけで$10〜$15ほどの費用がかかります。今回ここでは2社だけ試しにオファーしてみましたが採用はされませんでした。

今度はサブミッション系のサービスではなくロンドン発のコンサルティングを含むマーケティング会社です。ここはYouTubeに多くの音楽マーケティング戦略の動画をアップしているので、それを見るだけでも相当な知識と情報を得られますが、個別にサービスを依頼することでアーティストの現状に特化したアドバイスと戦略のドキュメントを作成してくれます。またその際に必ず30分ほどのオンラインミーティングを行います。自分の場合は活動全体の指針と各ソーシャルメディアのアカウント上のどこを直した方がいいかなど具体的な部分についてまで詳細にアドバイスをもらいました。今回はここでは£500を使いましたが、これを高いとみるか安いとみるかはちょっと判断が難しいところです。まずはYouTubeの動画を見まくった後で判断してみればよいと思います。

フォーマット化されたサービス以外ではMuck Rackというジャーナリストのデータベースサイトを活用してみました。ここではDugoに近いジャンルの音楽記事を書いているジャーナリストを調べて直接連絡をとってみたところ二人のジャーナリストに記事として取り上げてもらうことができました。また当然ながら他にもPitckforkなどの超主要メデイア計200件ほどにプレスリリースを作って送りましたが、こちらはリアクションが無かったです。レーベル経由、プロモーション会社経由でないと受け付けないというメディアもありましたし、このやり方はまだ突破口が見えませんが色々と手法を変えて継続していこうと思っています。

あとアーティスト別のオンラインの影響力やプラットフォームごとのデモグラフィックなど、あらゆる指標をみることができるサービスとして

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があります。ここはプレミアムに登録すると月額$140と少し高額ですが初回登録で無料期間がついてくるので、この間に色々と調べまくって現状世界のリアルな音楽事情がどうなっているのかを数値で把握してみるのもいいかもしれません。現実的な使い方としては自分と音楽性が似ていてロールモデルとしたいアーティストを検索してみてどのプラットフォームで大きくオーディエンスを獲得できているか把握したり、どの国や都市での影響力が大きいかを調べて自分がリソースを投下する際の参考にしたりといったところです。とにかくありとあらゆる膨大なデータが数値化されているので他にもアイデア次第では画期的なプロモーション方法を確立できるかも知れません。

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色々と試してみましたが肝心のSpotifyの再生数は数千程度でまだまだ停滞しています。これらの活動で少しづつネット上のプレゼンスを上げていくことが全てSpotifyのアルゴリズムに影響していると公式にアナウンスされているので当然おろそかにはできないのですが、どこかでSpotifyのエディトリアルプレイリストに取り上げられたり、主要なメディアにピックアップされたりなどして多くのオーディエンスに聴かれるようなターニングポイントがあって初めて次のフェーズに移れるのかも知れません。ただし上述のBurstimoの動画で何度も説明されているのですがInstagramやSpotifyのアルゴリズムは、それを正しいやり方でコンテンツをアップして刺激し続けていれば一定の数値を超えた時に必ず露出が増えるモードに変わるのでそれまでは暗闇の中をひたすらトンネルを掘り続けるように耐えていくしかありません。また自分に関してはまだリリースの総量も少なすぎるのでとにかくいい曲をどんどんリリースしていくことが必要ですね。

今回はなんか音楽とは全く関係ないことばかりを書きましたが、InstagramやTikTokを見ればどんなアーティストも今や独自に音楽とは関係ないコンテンツをバンバンアップしています。特にTikTokではJason DeruloThe Chainsmokersなどがちょっとした小芝居をするジョークの動画を頻繁にアップしていたりしていて驚きます。従来型のパッケージ販売やマスメディア中心のプロモーションが完全に過去のものになっていることを痛感します。

さてDugoに関してはとりあえずいまは次回のリリースに向けて鋭意製作中です。近いうちにまたここでリリースのお知らせをすることになると思いますので是非ともご期待下さいませ。