Takahiro Izutani

2014年11月

MacPro乗り換え日記

Photo 11-25-14, 01 19 43 copy-2.jpg
先日のMacPro購入から少しづつ旧システムからの引っ越しに向けた作業を続けていました。まずはUAD-2のプラグインシステムを旧来のPCI-eボードのシステムからUAD Satellite Thunderboltへ移行することから。新MacProに移行する際に一番厄介だったのがこのUAD-2に関することで、このSatellite Thunderboltがリリースされる前は今までのUADシステムを新MacProに接続するにはThunderboltポート経由でエクスパンションシャーシを取り付けねばならず、さらにはそのシャーシと互換性のあるのがUADの中でもフラッグシップ機のUAD Octo Coreのみだったので、このシステムに新調するだけでMacPro本体が買えるくらいの出費がかさむ状況でした。このUAD Satellite Thunderboltがリリースされたことでようやく取ってつけたような建て増し感もなく、少ない出費でUADプラグインのシステムを移行する状況ができました。

Photo 11-22-14, 11 00 38-2.jpg

新MacProのポートはUSB3が4つ、Thunderboltが6つ、Ethernet2つ、HDMIがひとつです。これだけのポートに外付けのドライブやディスプレイやキーボード等全てを繋げなければならず、実は結構工夫が必要でした。まずUSBポートにはキーボードとiLokなどのドングルのハブ、そして外付けの光学ディスクドライブを繋ぐ必要があります。いまの自分の状況だとUSB3を使った外付けのHDDも使う必要があり結局は状況に応じてケーブルを抜き差ししなければなりません。このポートの数の設定は暗に「外付けに関しては全てThunderbolt経由でRAIDを組んで使うべし」と言われている様なもので、自分も今後はそうしていかざるを得ないと思います。しかしながら現時点でThunderboltで巨大なRAIDシステムを組むのはこれもまた結構な出費になり、こういうところが新MacPro移行に関しての大きなハードルになっているところでもあります。今回は外付けにひとつだけThunderbolt接続でSSDケースを使って音源庫として使うことにしましたが、Thunderbolt+SSD+MacProのスピードはやはり半端ないすごさです。今までは曲の中で使うのをためらいがちだったCine SamplesやLASSなどのオーケストラ音源のMulti Setも躊躇なく立ち上げることができそうです。

それと今回はハードだけでなくMacOSXに関してもほぼ5年ぶりにメインの音楽制作のシステムとしては移行することになりました。2009年のSnow Leopard以降にリリースされたOSXは音楽制作という点に関してはプラスに作用する事が何もなく、ただ扱いにくくただメモリを無駄に消費するだけの厄介者だったのでアップグレードすることができませんでした。ですが新MacProではMavericks以降のOSで動かすことが必須なので、これも5年ぶりの新調ということになります。色々な検証と各ソフトやプラグインの動作チェックをしつつ移行して今のところは大きな違和感がなく作業できていますが、新MacPro上においてもオペレートの際に多少の体感上のモッサリ感があります。これはもう受け入れるしかありません。

実際に使ってみておもしろいなと思ったのは新MacProの放熱についてなんですが、この円筒上の形態の上の部分からまさに煙突の様に温かい風が吹き出ていてここから放熱しているんです。最初に上からふわ~っとした熱気を感じた時になんとも可笑しい気分になってしまいました。ハイテクなんだかローテクなんだかよくわからないこの仕組みにやけに愛着が沸いてしまいますw
Photo 11-26-14, 23 25 21-3.jpg
小さい植木鉢用の棚におさめてみましたw

Rock In Opposition Japan 二日目

Photo 11-22-14, 02 30 03 copy.jpg

前回の続きでRock In Opposition Japanの二日目のレポートです。

Aranis
Photo 11-16-14, 03 13 42.jpg
全員アコースティックの室内楽の編成で変拍子の暗く不穏な曲を演奏するバンドです。ロックのテイストはほとんどないですが、プログレのテイストはものすごく強かったです。あとメンバーの女性率が高く、またルックスも良く、さらには今回のフェスでバンドの平均年齢も一番若かったのではないでしょうか。個人的に気になったのはHappy Familyが以前カバーしてCuneiform Recordsのオムニバスアルバムに提供したDeniel Denis氏の楽曲「 Bulgarian Flying Spirit Dances」を彼らがカバー演奏していたことです。僕らのはもろにロックのアプローチだったんですが、本来の室内楽編成のアレンジでのライブが見られたのはとても良かったです。

Happy Family
Photo 11-22-14, 20 29 58.jpg
いよいよ自分たちの出番。ここまでオーディエンスとして見てきて少し自分たちが場違いのロック野郎どもということがわかってしまったので少しナーバス気味でしたが、まあ始まってしまえばなんとかなるもので、いつもながらのザックリとした演奏でフェスに彩りをそえられたんではなかろうかと思います。

SOLA Lars Hollmer's Global Home Project
このSOLAさんだけ自分たちの演奏後にバタバタしてしまって全く見られませんでした!

Mats/Morgan Band
Photo 11-16-14, 07 15 15.jpg
このバンドも本当に楽しみにしていました。ドラムのMorgan Agrenさんと鍵盤のMats Obergさんは少年時代からずっと共に演奏してきたコンビで、サポートミュージシャンとして鍵盤とギター担当のStefan Järnståhlさんと、さらにはベーシストは元MeshuggahのGustaf Hielmさんでした。彼らの最新アルバムSchack Tatíは完璧にタイトな演奏をコンピュータ内でエディットや加工を加えてさらに高次元のオリジナルな音楽に昇華させたものなので、これがライブでどうなるのかとても楽しみでしたが、ほとんど原曲のイメージのまま超人的なテクニックの演奏で魅せるタイプの演出だったので期待を超える部分と期待はずれの部分が半々という感じでした。とはいうもののあり得ないほどの難易度の高い楽曲を全くそうとは感じさせずに彼らの世界観に引き込む演奏は本当に素晴らしかったです。鍵盤のMatsさんは恐らく全盲なのだと思われますが、楽屋でも常にMorganさんが手を引いてあげてサポートしていました。本当に仲の良い幼なじみなんでしょう。そういうところから始まってこの奇跡的なサウンドが完成しているのかと思うとまた感慨もひとしおでした。

Present
Photo 11-16-14, 08 40 47.jpg
おそらくこの日のオーディエンスの大半はこのバンドのライブを見たさに来られた方だったのではないでしょうか。このPresentも70年代から活動している伝説的なカリスマRoger Trigaux (ロジェ・トリゴー)を中心に活動を続けているグループです。先述のAranisにも影響を与えているという本当に独特の音楽性でした。以前、というかもう10年以上前に当時大変お世話になっていたとあるプログレマニアの方と「真のプログレとはなんぞや?」という話になった時に、「暗く、重く、冷たく、そして長い!」のが定義であり、それを象徴するのが後期King CrimsonとPresentだ!という含蓄のある言葉をいただいたことがあり、今もなおその言葉が深く胸に刻まれています。この日はそんなPresentと対バンでライブを生で見ることができるという貴重な機会でした。ロジェさんは足を悪くされているのかずっと車椅子での移動で、楽屋でもずっとケータリングのところにとどまって穏やかな表情で出番までずっとタバコを吸われていました。
そして演奏中は鍵盤を弾かれていましたが、具体的なアンサンブルに貢献するというよりもステージにいることでライブ全体の気をコントロールするというような役割に近かったと思います。Presentのライブはまさに「暗く、重く、冷たく、そして長い!」というものであり、普段は長く冗長な音楽にすぐ飽きてしまう自分がなぜかPresentのライブでは、ロジェさんの気に引き込まれる様にその重苦しい空気に魅了されてしまいました。これこそがライブのマジックなんだと思います。他のお客さんを見てもみんなこの重苦しい演奏にノリノリでした。プログレに疎い自分からするとGodspeed You! Black Emperorにちょっと近いんではないかと思いました。
終演後は会場は大喝采でスタンディングオベーション。二日間色々な個性的なアーティストが出演しましたが、Presentの音楽は不思議と他のどのアーティストの音楽性をも内包し、それでいてどれとも類似性がないという様な本当に稀有なオリジナリティだったと思います。

ところで、初日にはフランスで毎年開催されている本家のRock In Oppositionに来年は我々Happy Familyが参加することがオーガナイザーのMichel Bessetさんからアナウンスされました。来年に向けてまたひとつ大きな楽しみができました。
10369863_10152887099772679_767433352781839261_n.jpg

Rock In Opposition Japan 初日

Photo 11-15-14, 09 00 46.jpg
先週は以前お伝えしたRock In Opposition Japanというロックフェスで演奏してきました。二日間にわたって世界各国の多彩なアーティストの演奏が楽しめるイベントで、出演者としてはもちろんですが、オーディエンスとしても楽しみにしていました。自分たちの演奏は二日目でしたがまずは初日のレポートを。

The Artaud Beats
Photo 11-15-14, 03 26 21.jpg
大ベテラン、イギリスの伝説的なグループHenry Cowのリーダーとして有名なChris Cutlerのドラミングが一番の見所でした。かなりアブストラクトな曲で演奏も恐らくインプロが主体だったと思います。Cutler氏の演奏はドラムと言うよりは何か絵を描いているような動作で、スティックのあらゆる部分を使ってドラムセットのあらゆる部分を叩くというアプローチで、実に多彩を音を出して表現していました。

る*しろう
Photo 11-15-14, 04 30 47.jpg
日本人アーティストのトリオバンド。ピアノ、ギター、ドラムスというちょっと変わった編成です。事前に抱いていた印象では音量小さめで複雑な楽曲と演奏テクニックを聞かせてくれるバンドかなと思っていたのですが、実際に見ると全然違ってかなり迫力のある演奏でした。お客さんをのせる術もバッチリで大盛り上がりでした。

Richard Pinhas
Photo 11-15-14, 05 38 51.jpg
70年代後半からフランスで活躍したHeldonというバンドの中心人物で、現在はギターのソロパフォーマンスを中心に活動している方です。ギターのソロパフォーマンスというと最近ではルーパーを使ったひとり多重録音的な演奏がはやっていますが、Pinhas氏の演奏はそれとは違いアンビエント的なものでした。エフェクトもフットペダルをずらっと並べるようなものでなくメインとなっていたのは3Uのデジタルマルチエフェクターでした。自分はプログレのバンドやってますがプログレの文脈にはあまり精通してないので、あえて例えるとすると90年代のMy Bloody ValentineやSeefeelのようなシューゲーザーの進化系に極めて近い音で、これはかなり楽しめました。

高円寺百景
Photo 11-15-14, 07 09 03.jpg
様々なプロジェクトで活躍するドラマー吉田達也さんが中心となって90年代から活動しているバンドです。90年代当時も数回ライブをみたことがあるのですが、当時とはメンバーも演奏も音楽スタイルもかなり変わっていました。当時よりも洗練されていて、楽曲も完全に独自のスタイルに発展していると思いましたが「これぞプログレ!」と思わせるような部分も随所にあり、しかも演奏はキレッキレの素晴らしさ。70分ほどの演奏でしたが、あっという間に終わったように感じました。

Picchio dal Pozzo
イタリアで70年代から活動しているという、これも大ベテランのバンド。鍵盤が二人、管楽器、ドラムス、パーカッション、ギター、ベース、映像担当という変わった8人編成でした。ギターの人はアンプを使わずにPCに突っ込んでプロセッシングした音をラインで出していました。いわゆるロックっぽいテイストはほとんどなくライトな映画音楽の様な雰囲気です。それと全員が色々と楽器を持ち替えたり、遊び心満載のアイデアを取り入れた演奏でした。映像とのシンクもとてもおもしろく、おそらく日本に到着してから撮影したと思われる寿司屋の内部を撮影した映像を加工したり、曲中にバックでオーケストラの指揮者が指揮をしている映像をマニュアルで演奏に合わせて動かしたり、政治的なメッセージを帯びた映像をシニカルに表現したりと、全てのアプローチが洗練されていてカッコ良かったです。サウンド的にはPenguin Cafe Orchestraのような感じに近いと思いました。映像は今年バルセロナでみたMassive Attackよりもおもしろかったと思います。一番期待していたこのアーティストが予想を超える素晴らしいライブで大満足の一日目でした。

早速オフィシャルのYoutubeチャンネルに当日の映像がアップされてました!カッコイイ!!
 ↓

Cocco-Japan HD   Picchio dal Pozzo official YouTube Channel

ゴミ箱MacProを買いました。(YosemiteからMavericksへのダウングレード)

Photo 11-18-26 H, 00 56 40.jpg

メインで制作に使っているMacProを新調しました。今まで使っていたマシンはEarly2009モデルなので約5年ぶりになります。長いこと新しいモデルがでなかったMacProも去年の暮れにようやく斬新なゴミ箱スタイルで登場したのですぐに買おうかと考えていたのですが、全ての環境の互換性を保つには費用がかかり過ぎることでずっと先送りしていました。ところが最近普段から頻繁に使っているプラグインシステム、UAD-2のThunderbolt仕様モデルとなるUAD-2 Satellite Thunderboltが出たことにより一気に移行が現実的でシンプルにできる状況になりました。

で、さっそく待ちに待ったゴミ箱Macを購入してセッティングしてみました。

まず問題になるのはデフォルトでインストールされているOSのYosemiteを消して一つ前のMavericksをインストールしなければならないことです。Yosemiteはまだリリースされたばかりで各ソフト、ハードなどの互換性が確認されておらず、基本動作もそれまでのMacOSXとはかなり異なるからです。そこで問題なのはMacは基本的に購入時にインストールされていたものより前のOSをインストール出来ないことになっている事です。おそらく自分が購入したマシンもYosemiteをインストールした状態で動作確認検証などを行っているはずです。

まずは今までよく行っていたOS復元作業のやり方である、Time MachineというOSXのバックアップシステムから復元するやり方を試してみました。普段、致命的なOSのクラッシュが起こった時にはいつもこのTime Machineを使ったバックアップヴォリュームから戻すことで完全に元に戻せていました。同じやり方でMavericksのバックアップをゴミ箱Macに復元することはできたのですが起動ができません。起動しようとするとディスプレイに禁止のマークが出てきてそれっきりです。

色々と調べて次に試したのは、外部ストレージにMavericksのインストール用イメージを作ってOSをクリーンインストールしてから今までのデータを移行するやりかたです。

OS X YosemiteからダウングレードしてMavericksに戻す方法

これを見て参考にして試してみたところ、今度は無事に今までのシステムを再現できましたが、OSの動作が不安定な上にLogic Pro用にインストールしているプラグインのオーサライゼーションの多くが消えてしまっています。さらにはMac自体の起動も緩慢になってしまいました。

最後に試したのは、旧マシンをターゲットディスクモードで立ち上げ→FirewireケーブルとFirewire-Thunderbolt変換プラグを使ってゴミ箱と接続→ゴミ箱をリカバリーモードで立ち上げた状態からDisk Utilityを使って旧システムのヴォリュームをダイレクトにゴミ箱のストレージに復元するやり方です。

これが見事に大当たりで、復元されたヴォリュームはあっという間に起動し、Logicのオーサライゼーションも全て旧システムと同じ状態。さらにLogic自体の起動もまさに爆速で立ち上がるようになりました。(Iさん何から何までありがとう!)Time Machineを使った復元とDisk Utilityを使った復元では復元されるヴォリューム自体は全く同じだと思っていたのですが完全に同じではないようですね。

ちなみに調子に乗ってSnow LeopardとMountain Lionもこのやり方で立ち上げられるか試してみました。こちらは復元まではできても起動できずでした。

このやり方は最も合理的で、しかも最もシンプルなやり方だと思うのですがなぜか検索しても見つからなかったのでブログに書いてみました。今後ゴミ箱MacProを購入予定の方のお役に立てれば幸いです。

また次回この続きを書こうかと思います。

Photo 11-18-26 H, 01 10 05.jpg

電源ケーブルはこんな感じで梱包されてました。

Photo 11-19-26 H, 13 02 00.jpg
中身はデス・スター、もしくはハカイダー。

2015/02/16 追記
Time Machineのバックアップからのレストアしたヴォリュームでも一度Macをセーフブートさせると、その後普通に起動できることがわかりました。ただしこのやり方だとDisk UtilityでRepair Disk Permissionをかけるとよくわからないエラーが沢山でるのでやはりダイレクトにレストアするのとでは何かが違っているようです。