Takahiro Izutani

Melbourne

Behind the Scenes of Call of Duty

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Games Weekレポートの最後にPAXで参加したオーディオ系のセッションの中からSledgehammer GamesのサウンドチームによるCall of Dutyシリーズに関するプレゼンテーションの内容を紹介します。

前回のブログで書いたようにPAXではGDCスタイルの様々なゲーム関連のセッション行われていたのですが、その中でもこのセッションは目玉でかなり多くのゲームオーディオに関わっていると思われる人たちが開場前から列をなしていました。

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Sledgehammerサウンドチームの哲学はスタートアップ企業の精神で常に前回とは違う新しいことにチャレンジすることで、プロジェクトごとに個別の成果を出すために決まりきったやり方から脱却して積極的に実験してみること。また即興的にアイデアを試してみること。そしてそういうった試みの中からこそ、それまでとは異なる結果がもたらされるということでした。

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まずは適切なリファレンス環境を共有するためにオーディオチームが作業する全てのスタジオをキャリブレートして同一のモニタリングができるようにしたとのことです。これはチームのメンバー間でデータのやり取りを行っている際にそれぞれのモニタリング環境が異なっていると足りないものを補おうとして徐々に音圧をあげていくような音圧競争(Arms Races)が起こってしまうからだそうです。一見音響の技術的な側面での調整に見えることですが実際は属人的な側面から起こり得る問題を避けるための施策になっているのが実にクレバーです。

またゲームのユーザは今の時代は様々なスピーカー、もしくはヘッドフォンでサウンドを再生することが予想されるのでダイナミックレンジの違いが再生環境でどう変わるかを確認することが必須であると。特にCODの様なゲームの場合は環境音と銃声のバランスが臨場感を演出するのに非常に重要なのでレンジ幅の設定は入念に考慮して決めていったそうです。これは上に書いた音圧競争回避とも密接に関わってくるテーマです。

このバランスを維持して臨場感を演出するためにCall of Duty: WWII ではコンポーザーに対して「楽曲内でドラムとパーカッションを一切使わない様に」との指示をしたそうです。

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「事前にサウンドチームがすべての状況を実際に経験するというコンセプトの元に録音を進めていったのですが、例えば誰かが銃を撃つのをそばで聞いているのと自分で実際に撃つのは全く違う経験です。オーディオチームというのはゲームオーディエンスに対して唯一物理的に接触できる存在で、例えばユーザがプレイの際にサブウーファーを使っていれば、ゲームサウンドがそれをキックすることでオーディエンスは単にサウンドを聞くだけでなく、物理的にそれを体感することができるんです。そこでオーディオチームは実際に音が発生する状況に身をおいて、どう聞こえるかではなくどう感じるかを体験することが必要だったんです

自分自身で実際の銃を撃ってみるだけでなく、頭上15フィートでヘリコプターが通り過ぎるのを体験するのはどんなものか、ヘリの飛行時に空いているドアから外に身を乗り出すのはどんな感覚か、これらの危険なことはCall of Dutyの世界の中では頻繁に起こる状況なので全て実際に体験してみたとのことです。

そして「Recording Small, Designing Big」という考え方を心がけ、例えば周囲で常に爆発が起こっている様なゲームプレイのシーンではプレイヤーの頭上からヘルメットに降ってくる砂の音を環境音の最下層にレイヤーしておくことで臨場感の演出にとって絶大な効果を生み出すことができたんだそうです。

また森の中の戦闘では爆弾の破片よりも爆発によって飛び散る木片のほうが実際は遥かに危険なので、オーディエンスにそれをリアルに認識してもらうためにあえて爆音に対して実際よりも大きめの音量で樹木が破裂して木片が飛び散る音をレイヤーしたそうです。そのために近くの森にハンマーを持っていって枝を揺らして折ったり、家族とハイキングに行くときにもレコーダーを持っていったりと常に素材集めの機会をうかがっていたと言っていました。

Call of Duty Avanced Warfare 3ではフォーリーの録音についてもそれまでの慣習を捨ててスタジオからでて、より実際の状況に近いロケーションで録音したそうです。例えば川を歩く音を録りに浅瀬のプールに行って、その音をスタジオで聞いてみたらやっぱりプールで歩いている音になっていたとw プールの壁の反響音があるうえに、川では川底の深さは一歩一歩すべて違い、それゆえ水の音も一歩一歩全てランダムに異なるものになるからです。

そんな風に日々「いかにリアルな音を探すか」に熱中していたら、ある日、自宅の外で戦車の音がするので驚いて外に飛び出したらゴミ収集車がマシンアームでゴミバケツを掴んで持ち上げてる音だったとw 結局その音はWater Tankのサウンドとして使うことになったとww
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最後に実際に撮ってきた動画をアップしてみました。Call of Duty WW2のクライマックスシーンのひとつに実際の録音状況を重ねて参照したプレゼン動画です。

Melbourne International Games Week その2

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前回に引き続きGames Weekのレポートです。Games Weekでは期間中に様々な団体によるイベントがメルボルン市内で開催されますが、その中でもPAX AUS (Penny Arcade Expo)というシアトル発のゲーム関連のコンベンション、エキジビションイベントが最大の目玉です。今回はスケジュールの手違いでここでの自分のスピーチは決まらなかったのですが、High Scoreのスピーチを見に来ていたオーディエンスがPAX会場で頻繁に声をかけてきてくれたおかげで多くの交流が持てました。今年3月のサンフランシスコのGDCに参加した時には何もつてがない状態でひとりで飛び込んだ様な形だったのでネットワーキングするにも苦労しましたが、今回は得るものが多かったです。前回のブログにも書きましたがシドニーやオーストラリアの他の街や他国から来ているひとの割合が意外に多く、ここでもゲーム産業のハブとしてのメルボルンの価値がこれから上がっていく可能性を実感しました。

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PAXでは正式な形でのビジネスミーティングの様なものはスケジュールに組み込んでなかったので会うひと会うひとと楽しく雑談してまわっていたのですが、ネットワーキングする上で外国の方と最初に打ち解けるにはお互いの国の文化のあるあるネタで盛り上がるのがとても有効です。例えばある人に「何で日本では店先に水を撒いたりするのか」と聞かれ「あれは道が舗装されてなかった時代に飲食店が衛生上行ってた事が慣習化したんだ」と説明したらとても府に落ちた様でした。オーストラリアは昔から水が貴重なのでなぜ日本みたいに街が清潔な国がわざわざ水を無駄にするのか理解不能だったとのことです。

また自分が驚いたのは現地の方がある会話の中で「オーストラリアではカンガルーはペストなんだ」と言ったことです。ペストとはまさに病原菌のペストで、つまりほっとくと増え過ぎて収拾がつかなくなる困った存在というほとんどゴキブリの様な意味で言っていて、さらには「どんどん獲って食べた方がいいけど肉が筋肉質で硬いので食べにくいんだよ」とのことで何とも意外な話でした。せっかくセンシティブな話題が出たのであえて「捕鯨のこととかはどう考えてるの?」と聞いてみたところ「一部の反捕鯨組織みたいな考えのひとはほとんどいないし捕鯨が日本の文化だってことも知ってるよ」と、しかし「でも以前に知り合いの日本人に鯨っておいしいの?って聞いたら特別に美味しいものってわけではないって言ってたんだ、だったらあえて捕る必要があるのかなとは思う」と言われてしまいました。その彼が言いたいのはつまり鯨料理が抜群に美味しければ勝手に広まっていって反対意見なんてねじ伏せてしまうだろうということでした。これには自分も参りましたが「反捕鯨活動は日本人の伝統文化に対するアイデンティティ・クライシスを誘発して逆に捕鯨文化を下支えしてる面もあるんだよ」とも伝えておきました。

High ScorePAXの間に二日間オーストラリア最東端のバイロンベイという美しい海辺の街にも休暇で行ったのですが、そこで高台から沖の海をみると鯨やイルカの群れを見ることができて、それはまさにこの世のものとも思えない程の美しい光景でした。こんなものを日常的にみていたら感情的に反捕鯨に向かう感覚もわからんでもない気がしました。カンガルーの件も含めて感情的にもつれた文化的なコンフリクトは実際に現地で体験しないと実情は伝わらないなと思いました。

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PAX最終日にはCD販売の特設会場を用意していただいたので自ら売り子として精力的に自分のアルバムや他のBrave Waveからのリリース作品を売っていきました。こういう場所ではまだフィジカルの製品は強いのですが、自分が一通り商品内容を説明したあとで実際の音を自分のスマホからSpotifyで試聴して確認してからどれを買うか決める人が多く、今の時代の複雑な音楽業界事情を反映したおもしろい現象だと思いました。購入後は早速パッケージを開けてインナースリーブにサインをするのですが「何か日本語を書いて欲しい」というお客さんには即興でその方の名前を当て字で漢字にして書いてあげてその漢字名の意味を説明してあげました。これは外国では鉄板でウケるんです。

次回、最後はPAXで参加したオーディオ系のセッションについて。

Melbourne International Games Week その1

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今回は先日参加したメルボルンでのGames Weekのレポートになります。まずはKeynote Speakerとして登壇し、パネルディスカッションにも参加したHigh Score 2019というゲームオーディオに特化したイベントから。High Scoreは近年メルボルンの中で新興のゲームデベロッパーが集積するThe Arcadeという非営利目的で組織されたワークプレイスで開催される交流イベントです。The ArcadeのコンセプトはボストンのCambridge Innovation Center(CIC)のやロンドンのLevel39にも似たベンチャービジネス間の容易で頻繁な交流を可能にするための環境ということです。

This is a report of Games Week in Melbourne the other day. First of all, I'd write about the event called High Score 2019 that specializes in game audio, which I took part as a Keynote Speaker and participated in the panel discussion. High Score is a networking and presentation event held at a non-commercial workplace called The Arcade, which is a collective of emerging game developers in Melbourne. The concept of The Arcade is to make an environment that allows easy and frequent exchanges between venture businesses similar to the Cambridge Innovation Center (CIC) in Boston and Level 39 in London.

The Arcadeの位置するメルボルンの南側エリアは中心地の雰囲気とはかなり異なり、いわゆる高層ビルなどはなく明らかな観光目的のための建物や店もなく、落ち着いていながらも新しくビジネスが立ち上がる雰囲気を彷彿させる新興エリアという感じです。というのもオーストラリアの中ではシドニーに比べてまだこちらは不動産価格の高騰がなく、家賃が安く抑えられており、さらにはヴィクトリア州からゲーム産業に対して成長産業としての助成金が投入されていることもあって、オーストラリア中から多くのスタートアップとさらにはそれに付随してビジネスチャンスを求めるゲーム関連のクリエイターも多く移り住んで来ているとのことで、まさに街の雰囲気だけでなく、ビジネス環境的にもかつてのブルックリンやベルリンにとても近いという、今後の成長を予感させる街です。

Melbourne's south area, where The Arcade is located, is quite different from the central Melbourne's atmosphere, there are no so-called high-rise buildings, no obvious constructions or shops for tourist purposes. It feels like an emerging area that is reminiscent of a new business startup atmosphere. This is because there is still no real estate price rise in Melbourne compared to Sydney, the rent is kept cheap, and further, a certain amount of subsidy has been put in from Victorian Government to the game industry. As a result, many startups from all over Australia and many games related creators seeking business opportunities have also moved in. Not only the atmosphere of the city, but also the business environment is very close to former Brooklyn and Berlin. It is a city that gives you a sense of future growth.

自分のKeynote Speechの内容は前回のブログを参考にしてもらうとして、High Score全体の雰囲気はオーディオに特化したアットホームな縮小版GDCという感じです。ただし自分がスピーチやディスカッションの最初にオーディエンスに尋ねてみたところゲーム業界志望の学生の方の割合が多く、さらに登壇後の質問や立ち話で実際に話してみると多くの学生の方は大学で作曲の専攻をとっているだけでなく、デジタル・オーディオの技術的な専門知識や業界のマーケティングまで含めて学習されている方が多く、さらには自身の楽曲を発表するYouTubeチャンネルですでに万単位のサブスクライバーを獲得しているひとまでいました。しかしそれでもなお「どうやったらゲーム業界でコンポーザーとしてのチャンスを得られるのか」を試行錯誤しるようです。またアメリカやカナダなどから参加している方も少なからずいて、近年のゲーム業界の競争の激しさを実感しました。

As for the contents of my Keynote Speech, refer to the previous blog, anyway, I think the overall atmosphere of High Score is like a cozy compact version of GDC specialized in audio. However, when I asked what kind of people was coming there at the beginning of the speech and discussion, there were a large percentage of students who wanted to be in the game industry. In addition to being majored in this field, many of them are studying technical expertise in digital audio and marketing in the industry as well, and some of the YouTube channels where they uploaded their songs already have had over 10,000 of subscribers. However, they still seem to try and error "how to get a chance as a composer in the game industry". In addition, there were a few participants from the United States and Canada, and I realized the intense competition in the game industry in recent years.

High Score期間中の3日間は2回の登壇、ゲーム関連のウェブラジオにABC(オーストラリア放送協会)の番組の計2回、またイベント後のネットワーキングパーティ以外にも主催者宅でのホームパーティや船上パーティなどにもお呼ばれされて色々と興味深い意見交換ができました。中でもホームパーティではアメリカから来ていたゲーム音楽の権利ビジネスのストラテジスト、某超大手オンラインゲームデベロッパーのオーディオコーディネーター(肩書だけではふたりとも具体的に何をやってるのかいまいちわかりませんが^^;)との話は非常に興味深かったです。ゲーム音楽の権利に関してはアメリカの著作権管理団体であるASCAPでは著作者単位ではなく楽曲単位での登録が条件次第では可能になっていることなど、また日本のゲームコンポーザーもすでにJASRACを避けて国外のPROに加盟することによって上手く自曲の管理と従来の日本での譲渡契約の受注を両立させているケースを聞きました(これは個別の条件によって複雑に権利の範囲が変わるので今なお難しい問題だとは思いましたが)またオーディオコーディネーター氏からはプロジェクト内の分業および効果的、効率的な情報のシェアに関する戦略を。また彼らおよび今回自分を招聘してくれたホームパーティの主催者(彼はゲーム音楽のレーベルと制作会社2つのオーナー)は皆もともとはコンポーザー出身ということもあって音楽に対する愛情はもとより、実際の制作環境を理解した上で現在の専門分野のスキルをうまく構築してる点が素晴らしいと感じました。

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During the High Score period, I gave two presentations, appeared on game-related web radios and ABC (Australian Broadcasting Corporation) program. In addition to the networking party after the event, I was invited to the home party at the organizer's house and exchanged various interesting opinions. I was particularly interested in talking with the game music rights business strategist who came from the US and the audio coordinator who works at a certain major online game developer. Regarding game music rights, ASCAP, a copyright management organization in the United States, allows registration in units of music instead of authors, depending on the conditions, etc. I also heard that some Japanese game composers have already successfully managed their songs and received orders for transfer contracts in Japan by avoiding JASRAC and joining a foreign PRO. I think that it is still a difficult problem because the range of rights changes depending on the case. The audio coordinator also spoke about the division of work within the project and strategies for sharing information effectively and efficiently. In addition, they and the home party organizer (He manages game music label and game audio production company) were originally composers, so they love music and have built their current specialized skills well after understanding the actual production environment. I felt that it was wonderful.
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さて、今回High Scoreでは日本からはファミコン時代からゲーム業界で活躍されている作曲家の松前真奈美さんと自分が招待されていたのですが、自分がKeynoteを使ったプレゼン形式のスピーチを行ったのとは対象的に松前さんは実にシンプルにご自身の偉大なキャリアを用意したテキストを読み上げていきながら要所要所のみ参考音源で説明するというスタイルでした。まず日本語で話しながら通訳を入れて英語にしていくという形で、ともすると単調になってしまい大丈夫かなと思って聞いていましたが、聴衆は実に真剣に食い入るように松前さんの一言一言に聞き入っていたんです。多くの聴衆の方が学生やまだ若いコンポーザーであり、ゲームの創世記から音楽を提供している松前さんの言葉は、ある種「神の言葉」と彼らには聞こえていたのではないかと思います。これだけゲーム業界への参入が難しく競争率の高い状況で若い彼らは「神の言葉」からなにかヒントを得ようとしているようにも見えました。と同時にゲーム創世記を作った日本のゲーム業界の歴史の重みと、今なお強い影響力を持つ資産としての強みを実感する光景でした。

By the way, I was invited to the event with composer Manami Matsumae, who has been active in the game industry since the Nintendo era. In contrast to what I gave a presentation-style speech using Keynote, Manami took the style of explaining only necessary points with a reference sound source while reading a prepared text. Firstly, she spoke in Japanese and then Interpreter spoke it in English. I thought it could be monotonous, the audience seriously listened to Manami's speaking. Many attendees are students and still young composers, and I think the words of Manami, who provided music from the genesis of the game industry, were heard by them as a kind of "word of God". Nowadays It is so difficult to enter the game industry, and the young people seemed trying to get some hints from the words of God. At the same time, I realized the significance of the history of the Japanese game industry that created the genesis of the game and the strength as an asset that still has a big influence.

つづく

High Score 2019のKeynoteファイルとYouTube動画

メルボルンのゲームオーディオイベント High Score 2019で行った講演の際につかったKeynoteファイルをアップロードしましたので興味のある方はダウンロードしてご覧になってみて下さい。英語のプレゼンターノート(アンチョコ)も残してあります。

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当日の様子をまとめた動画もアップされています。