Takahiro Izutani

2022年8月

OTAKON 2022 その2

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初日の個人パネルを終え、そのあとはメディアの取材を4件ほどこなしました。全てゲーム業界向けのウェブメディアだったのですが、中には自分の父親が南米ラテン音楽のマニアで自分が子供の頃から日々そういう音楽を聞かされて育ったことを調べてきて、そのことと今制作しているゲーム音楽にはなにか関連性が生まれているかという質問をしてきたインタビュワーの方もいました。その事自体は事実なのですがどこで知ったのか、実に入念な下調べだなと感心することしきり。

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さらにその後は同行したもうひとりのゲスト藤田晴海さんのパネルへ。藤田さんは元CAPCOMの作曲家でファミコン時代のロックマンシリーズの作曲をされてきた方で、いまやレトロゲームブームの立役者として世界中で大人気のレジェンドです。このパネルでは軽く自己紹介や近況報告などをされたのちにすぐQ&Aがはじめられましたが、一時間ひっきりなしに質問用のマイクの前に立つオーディエンスが途切れませんでした。藤田さんいわく、海外のファンイベントではどこでもファンの方からの質問が絶えないのであえてQ&Aに特化した形式にしているそうです。それにしてもファミコン創世記のゲーム業界の話、3音ポリで制作していた頃のゲーム音楽の話、PlayStation1の登場によってそれまで仕事の付き合いがあった8社のゲーム制作会社が全て倒産した話など、興味深い話が満載で、これは得られる情報が少ないアメリカのファンには垂涎の話なのだろうなと納得する次第でした。OTAKONの会場ではオーディエンスだけでなくスタッフの方々や取材メディアの方まで藤田さんと打ち合わせしたあとに「あの実は私ロックマン2の〜ステージの曲の大ファンです」などとカミングアウトさながらに声がけする方が多いのがとても印象的でした。初日はこのあとサイン会を行って終了。

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パネル2日目は自分と藤田さん二人並んでのコンポーザーズパネルを行いました。前日のゲームファン向けの内容からは少し音楽制作よりに突っ込んだ内容で行うという触れ込みにしてあったのですが、ここの会場に集まっていただいた方々は挙手による調査だと7割ほどが何らかの形で音楽活動をしているミュージシャン、うち3割ほどが作曲家、1割弱ほどがサウンドデザイナーとのことでなかなか音楽的に突っ込んだQ&Aセッションになりました。皆さん非常に熱心でこちらも質問の列が途切れることがなく60分強のパネルを終えました。

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このあとさらに2回目のサイン会を行って今回の全ての任務終了となりましたが、日本から来た他のゲストにはファンの方々は「さん付け」でうやうやしく呼ぶことが大半なのになぜか自分にはみんな「Hey! Takahiro!」とメッチャ軽く入ってくるひとばかりなのは何なんだろうと思いましたw

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今回のOTAKONではゲストの一人一人に通訳と称してアテンドがつけられていて待ち時間やフリーの時間にどこかへ出掛けるとしても常にお付きとして帯同してもらい、交通費、美術館の入場費、レストランの代金などを全て払ってもらえるというシステムになっていました。イベントの運営資金は基本的に入場料が最も大きい割合を占めているとのことですが、3年ぶりのリアル会場での開催ということもあってか35000枚のチケットが売れ、さらにはマーチャンダイズやスポンサーからの収入で運営規模は数億円にも登るそうです。もはやこのレベルだと企業経営みたいなものですね。

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通訳の方は基本ボランティアですが、皆さん優秀な方ばかりで普段の仕事はMeta (Facebook)でWhat's App部門の課長をされてたり、大学卒業後すぐ製薬会社のコンサルをされてたり、イベントの統括をされてた方はJohnson&Johnsonでワクチン開発部門のトップとして働かれてたりと、皆さんそうそうたるキャリアの持ち主でした。こう言ったボランティアの方々と専従で働いているスタッフで一年かけてこの様な巨大なイベントを作り上げてるのかと納得した次第です。ちなみにこのあと観光で訪れた美術館にもMetaの課長さんに帯同していただき全ての面倒を見ていただきました。ちょっとひとりで気軽に行動したいなと思っても「これが仕事ですので」と言われると断ることも出来ず、皇族の方々のお気持ちはこんな感じなのかなとふと感じました。

OTAKON 2022 その1

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7月29日から7月30一日までアメリカワシントンDCで開催された東アジアのポップカルチャーファンイベント、OTAKON 2022に参加してきました。

今回はゲームコンポーザーとして1時間半のパネルの枠をいただいたので、 過去に携わったゲームタイトルの中からいくつかをピックアップし、またゲーム音楽のリミックスワークなども紹介して、 それぞれのゲームのファンの方々に自分が普段どんな作業をしているのかを紹介させていただきました。

特に自分のキャリアの中でも思い入れの深い作品だったMetal Gear Solid 4のクライマックスシーンにつけた音楽についての深く掘り下げた解説をメインにパネルを構成しました。

I participated in OTAKON 2022, an East Asian pop culture fan event held in Washington DC from July 29th to July 30th.

I was given an hour and a half panel slot as a game composer, so I picked up some of the game titles I have worked on in the past and introduced my remix work of game music and what I usually do as a game composer to the fans of each game showing what I usually do.

The panel consisted mainly of an in-depth explanation of the music for the climactic scene of Metal Gear Solid 4, which was one of the most memorable games in my career.

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自分が多く関わる様なゲーム音楽ではインプレイ中の音楽とムービーシーンにつける音楽があります。ムービーシーンはゲームの用語ではカットシーンと呼ばれていて、自分はこちらの音楽を担当するケースが比較的多いんです。映画やドラマにつける音楽と違うところとして、カットシーンは短ければ数十秒長ければ数分のムービーの中でゲームの展開や物語の説明に必要な音楽を当てはめて状況を的確に説明し、プレイヤーの気分を盛り上げるというのが役割です。今回取り上げたシーンはクライマックスでメインキャラクター二人が素手で闘うシーンの演出です。MGS4は複雑な国際政治や近未来に登場しうる兵器や技術の描写が特徴的ですが、今回取り上げた作品のクライマックスはそういったクールな描写を全部すっとばして、主人公とその敵役が無骨にも素手で殴り合うだけのシーンですw 

In the kind of game music that I am often involved with, there is music for in-play music and music for movie scenes. Movie scenes are called "cutscenes" in game terminology, and I am often in charge of music for these scenes. Unlike music for movies or TV dramas, the role of cutscenes is to explain the game's development and story in a short movie, which can be several dozen seconds or several minutes long, and to explain the situation precisely to the player and to lift his or her spirits. The scene featured here is the climax of a bare-knuckle fight between the two main characters, and while MGS4 is known for its complex international politics and depiction of weapons and technology that could appear in the near future, the climax of the piece featured here skips over all of those cool elements to show the protagonist and his antagonist in a bare-knuckle fight.

そして監督から与えられた唯一のリスエストは、番長同士が河原で殴り合ったあと土手で大の字にひっくり返り、夕日をバックにして「おまえなかなかやるな」「おまえもな」「ハハハ」とやり合う昭和のアレを演出してほしいということでしたw そして渡されてきたのは未完成の男同士が殴り合うだけの絵コンテの様な映像のみ。

この様な難題が降り掛かった時に自分が頼りにしているのはマインドマップを作成して必要な要素と与えられた状況を全て書き出して、そこから段階を経て具体的なサウンドと使用楽器の選択に落とし込んで行く手法です。このときは数分の映像を4つのシークエンスに分割してそれぞれに役割を与えて最終的に「おまえもな」のところまで感情と状況の変化を演出する流れを構築していきました。

And the only request the director gave me was to direct a Showa-era scene in which the two gang leaders beat each other up on a riverbank, then turn over on their backs on the bank, with the setting sun in the background and say, "You're pretty good," "You too," and "Ha ha ha ha". And all I was given was a storyboard-like image of two men punching each other.

When I am faced with such a difficult task, I rely on the technique of creating a mind map, writing down all the necessary elements and the given situation, and from there, step by step, I put them into specific sounds and instruments to be used. In this case, I divided the several-minute video into four sequences and gave each of them a role, eventually building a flow to produce changes in emotion and situation up to the point of "You too".

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自分の場合、アイデア出しに困ったときは他にも色々な対処法を持っているのですが、特にマインドマップから落とし込んでいくやり方は自分の思考のプロセスの記録が取れるので、途中でとっちらかっても元に戻ってやり直すのが簡単ですし、中間のプロセスで浮かんだアイデアを他のプロジェクトに転用できたりもします。また実は最近気がついたのですが、Dugoの楽曲制作時にもこのやり方でアイデアをまとめていたところ、思考の記録を残しておくと、例えばミュージックビデオや制作ストーリーのテキスト、別ミックスバージョンなどの派生物としてのコンテンツを作るときなどに非常に役に立つとわかりました。

In my case, when I have trouble coming up with ideas, I have a variety of other ways to deal with it, but in particular, the method of mind-mapping my thinking process makes it easy to go back and start over if I get lost in the middle of the process. I can also use the ideas that come to me in the middle of the process for other projects. I have also recently realized that this way of organizing my ideas when creating music for Dugo is very useful for creating derivative content, such as music videos, production story texts, and alternate mix versions.

以前からここのブログではどうやって様々なコンテンツを最速で大量に生み出して、それらを関連づけていくかというテーマで色々と書いてきましたが、ゲーム音楽制作時に取り入れたこういった手法もとても役に立っています。

I have written a lot in the past on this blog about how to create a large amount of different content as fast as possible and relate them to each other, and these methods that I adopted when creating game music have been very useful.

さて、OTAKONパネルの方は一時間半程の長丁場でしたが、今回は二人のモデレーターの方とのカジュアルな雑談を交えての進行だったので、たくさん集まっていただいたゲームファンの方々にも気軽に楽しんでもらえたのではないかと自負しています。そして最後に、MGS4のパネルで使用したシーンの音楽のリミックスとして今回のOTAKONのために制作したトラック"A Perfect Circle"をライブで演奏して締めくくりました。

The OTAKON panel lasted about an hour and a half, but I am proud to say that it was a casual chat with the two moderators, and I think that the many game fans who gathered for the panel were able to enjoy itl in a relaxed atmosphere. 

The panel concluded with a live performance of "A Perfect Circle," a remix of the music used in the MGS4 panel, which was created just for OTAKON 2022.



その2につづく