Takahiro Izutani

最近増えつつある超高品質ヘッドフォン、イヤホンについて

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このところDolby Atmosミックスされたトラックにハマっていたこともあってイヤホン、ヘッドフォンでの作業にメキメキと興味が湧き上がってきています。そこでまず今まで使ってきたAirPods Proに加えてイヤホンを2つ購入して見ました。

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まずはSony WF-1000XM4。こちらは現在市場にあるものの中で最高評価という触れ込みの製品です。実際に音質のまとまり方とノイズキャンセリング機能は大変素晴らしいです。しかし音楽のまとまり方が実に面白くない。主観的な表現ではありますがスペック的に数値を揃えてまとめたようなキレイな音で、いわゆる「カッコいい音」と呼びたくならない感じです。また専用のスマートフォン用アプリもあまり使い勝手が良いとは思えませんでした。もしかしたら志向する音楽のジャンルによってはドンピシャな製品なのかもしれません。クラシックには合いそうです。

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次にSennheiser Momentum True Wireless 3を購入。聞いたところしばらく続いたSonyの牙城を脅かしつつあるのが、マイクの品質で高名なこのドイツの超老舗メーカーとのこと。聴いてみると確かに音質の良さ、というよりサブベースのグリップ感と全体的な解像度、それにともなって生まれる音楽の躍動感は素晴らしいもので、これに比べるとAirPods Proの音質は少し滲んで奥まったところでわずかにぼやけた感じに聞こえるのが認識できます。ただ筐体の大きさとフィット感はAirPods Proに軍配があがります。何かを聞こうとしたときにサッと手が伸びるのはAirPods Proになりそうです。ですがこのTrue Wireless 3はミックス作業時のモニタリングの最終チェックとしてでも使えると思いました。

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そんなおり本日はフジヤエービック主催の「秋のヘッドフォン祭2022」があったので足を運んでみました。

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ヘッドフォンだといま自分が注目してるのは南カリフォルニアの新興メーカーAudezeなのですが、同社がエンジニアのManny Marroquinとの共同開発でリリースした初のプロオーディオユースの新製品MM-500が最大のお目当てでした。試聴してみると開放型ということもあり、音場の枠を取っ払ったような開放感と広がりを感じてミックス全体を聴きながら個別の楽器や音の要素にフォーカスしてその質感を確認することができます。広い自由な空間に音のファクターが整然と並べられるという感じです。それでいて適度に奥行きも感じられて、あまりにドライすぎない様な演出がされています。

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つぎはDan Clark AudioStealthです。こちらは密閉型でサウンドの方はいわゆるモニターライクで、カミソリの様な切れ味の精密な測定器タイプです。が、それでいて聴き疲れしないようなザラつきのない柔らかさもあります。リファレンスしたNorah Jonesの「Seven Years」という曲のアコギの一音一音のトランジェントのニュアンスの違いまで認識できてゾットする程の精密さです。こちらは自分にとってはリラックスして楽しんで聞くよりは緻密にミックスの最終的な形状とバランスを決めていくのに使うツールとして有用に感じます。Dan Clark氏はエレクトロニカ好きだとのことで、以外にその手の音楽の制作者との親和性が高いかもしれません。代理店の方と話したところ、CanJamという世界最大規模のヘッドフォン展示会で今年NY、Londonなどで最も評価が高かった3つのメーカーAudeze、Dan Clark Audio、Meze Audioの三社をフジヤエービックからの推薦もあって全て取り扱うようになったとのことでした。

音楽制作のプロジェクトが今後もどんどんグローバル化し、リモートワークが増えていくとなると共通のモニタリング環境を持つことの意味や、移動しながらの作業も考慮してこの分野はさらに需要が高まるように思えます、もはやユーザ自体がかなり高音質のイヤホンで音楽を楽しんでいるのが現状ですしね。スピーカーをメインにしての制作がなくなるとは思いませんがMomentum True Wireless 3で聴くローエンドの再現性を体験するとスタジオのラージスピーカーで爆音を出してローの把握をしていたのが遠い遠い昔の様に感じられるのでした。