Takahiro Izutani

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The Wire Magazineのインタビュー

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1980年代にUKで創刊された老舗の音楽系カルチャー雑誌The Wire Magazine (Issue 496)に、Happy Familyのロングインタビュー記事が掲載されました。我々としては過去最大かつ最も詳細なインタビューとなっており、バンド活動以外の音楽的バックグラウンドや、1990年代に演奏活動を開始した当時の東京の音楽シーンの様子、活動休止と再開の背景など、さまざまな内容について語っています。そして何より、Happy Familyの次回作についても具体的にお話ししています。ぜひご一読いただければ幸いです。

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インタビュー自体は音楽ジャーナリストのDaniel Spicer氏と自分とのZoomによる1時間ほどの雑談をもとにしています。Daniel氏は本来ジャズ系のジャーナリストであり、インタビューや執筆も主にジャズを専門としているそうですが、実は筋金入りのプログレマニアであり、Happy Familyが所属するレーベル「Cuneiform Records」の熱心なファンでもあります。彼は、Cuneiformから年に3回ほどリリースされる新作を1980年代から欠かさず聴き続けてきたとのことで、そうした背景もありThe Wire Magazineが今回Happy Familyを取材すると決定した際にインタビュワーとして彼が抜擢されたそうです。

記事の中でも触れられていますが、我々が思っている以上に西洋文化圏の人々にとって日本のアンダーグラウンド・カルチャーは非常に興味深いようで、とりわけ我々が演奏活動を始めた90年代の東京の混沌とした音楽シーンについて、自分の知っている範囲でいろいろと話すとDaniel氏は非常に興味深そうに聞き入っていました。また、90年代の東京というと、世界中のマニアックな音楽が次々とリイシューされ、マニア垂涎の自主制作盤が直輸入されて大手レコード店でも販売されていた時代で、Daniel氏にとっては「UKでは手に入らない貴重なものが東京にはすべてある」という感覚だったようで、「Henry Cowのアルバムが東京の多くの音楽ファンに聞かれているなんて信じられなかったよ。」と当時を懐かしそうに語っていました。

さらに、記事で使用する可能性があるということで「Happy Familyの過去の写真がないか」というリクエストがあり、メンバー全員でアルバムを掘り起こしてみたところ、思わず赤面するような写真がいくつも出てきました(笑)。中には10代の頃のものもあり、あらためて「こんな子どものような頃からこのバンドは続いてきたのだな」と、感慨深く感じるひとときをこの機会に得ることができました。

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Happy Familyの新作「4037」がリリースされました。


一年半近くかけて進めてきたHappy Familyの新作「4037」がようやく無事リリースとなりました。

実はこの話は元々、Cuneiform RecordsのSteve Feigenbaum氏から、USのノースカロライナで開催されているProgDayという野外フェスがレーベル40周年の記念イベントとして行われ、そのスペシャルゲストとしてHappy Familyを招待したいという申し出を受けたことが発端でした。しかし、もしフェスが天候の事情で中止になれば、他の代替となるイベントがなくなるというリスクを懸念し、ライブの話は自重。その代わりにバンド側から「だったらCuneiform Recordsの40周年を祝う新作を作るよ」と提案したのが始まりです。

Happy Familyは2015年のヨーロッパツアー以降、ある意味2013年の再結成後の3年間でやりきった感があり、燃え尽き症候群になってしまっていました。それ以降、メンバー同士もほとんど会うことがなくなってしまっていたのですが、今回のプロジェクトをきっかけに再び集まることが増え、バンドが復活できたのもSteve氏のおかげです。

そしてリードトラックの「Pygmalion」は、10年前、自分の曲のディテールの表現について他のバンドメンバーに対して厳しくしすぎてしまった結果、彼らを燃え尽きさせてしまったことへの自分なりの償いを込めたタイトルでもあります。とはいえ、今回もメンバーにとってはかなり注文が厳しい曲だったようですが......。

とにもかくにも、Happy Family史上初のミュージックビデオとなった「Pygmalion」をぜひ楽しんでいただければ幸いです。

Let It Roll 2024

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プラハで毎年開催されている世界最大のドラムンベースフェスティバル「Let It Roll 2024」に行ってきました。日本ではドラムンベースのシーンはあまり盛り上がっていないため、プラハまで行ってようやく大音量の重低音と高速ブレイクビーツの快感に浸ることができ貴重な体験となりました。

会場はプラハ市内から車で約1時間の距離にあるMiloviceと呼ばれる場所の空港跡地で、広大な土地のほとんどがフェスのイベントスペースになっています。入り口からメインステージまで歩いて約3キロほどの距離がありました。ステージは4つのメインステージを中心に、そのほかにも至るところに小さなDJブースやフロアがあり、どこからでもドラムンベースの音楽が流れてきます。その時々の気分やDJに合わせて、音楽を楽しみながら会場を歩き回るといった感じでした。

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自分の場合いろいろなステージを移動しながら楽しんでいたため、iPhoneの万歩計を確認すると、一日の移動距離は4万4千歩、約41キロにもなっていました。来場者は20代30代と見られる若い人が多いのですが、映画「Mad Max」の様なファッションだったり、女性はほぼ半裸のようなコスチュームで踊っている人も多く非常に開放感があり、またとてもフレンドリーで気軽に声をかけあって話ができるような雰囲気でした。

ヨーロッパではオランダやドイツに突出した才能あるドラムンベースプロデューサーが多く、シーンが活性化しています。もともとはUKから発生した音楽ではありますが、特にオランダには大御所のNoisiaや今回Let It Rollに出演していたMefjus, Imanuなど、斬新で複雑かつ緻密なトラックを作るプロデューサーが多く、今のダンスミュージックシーンの中でも最先端を走っているのが、これらのオランダのドラムンベースプロデューサーたちの音楽です。

ドラムンベースの楽しさは複雑で独創的なビートに身体をどう合わせて踊るかという、感覚的な面でのチャレンジにあります。そのビートに合わせて自由に身体を動かすことで自分の創造性が活性化され、頭の中で新たな発想が生まれ、それが後のアウトプットに繋がっていく感覚があります。これが自分がドラムンベースを特に好きな理由です。

一番のお目当てだったCamo & Krooked & Mefjus

90sから活躍してるレジェンド、ED Rush

唯一のライブ演奏だったkimyan law

Netsky 聴きやすくポップで知名度も高いですが割と皆静観してる感じでした。

これも大御所のA.M.C。なんだかんだで一番踊りやすかったです。最終日の一番いい時間帯で実質的なトリです。

女性DJのMandidextrous。ロックっぽいトラックを多くプレイしていて、これもメチャクチャ踊れました。

若手のDisrupta。数小節ごとにトラックが変化する変わったスタイルで常に予想を裏切るおもしろいプレイでした。

Dugoのニューシングル"Embrace"がリリースされました。

約一年ぶりにDugoの新曲「Embrace」をリリースしました。歳を重ねるごとに自分の中の悪い完璧主義が強まっており、一曲を完成まで持っていけるスピードが落ちています(実は制作途中の膨大なストックがあります)もともとDugoはアコースティックギターのリフとブレイクビーツ、エレクトロニックなサウンドを融合させた音楽スタイルをコンセプトとして始めたプロジェクトですが、そういったことにばかりこだわっているとなかなか面白いものが生まれず、今後はもっと色々な形で自分の頭の中に浮かんだ音のスケッチのようなものを発信できるようにしていこうと考えています。

トレーラーのビデオに写っている自分は、昨年夏、日本最北端の島、利尻島の標高1700メートルの利尻山に登ったときの映像です。この時も新しい音楽のアイデアがなかなか浮かばず、ふと思い立って10日ほど、利尻島と礼文島にフィールドレコーディングの旅に出かけたときに録画した映像です。登り6時間、下り5時間の合計11時間に及ぶ登山時の記憶やイメージ、また実際に録音したフィールドレコーディングのサウンドも楽曲に含めながら、ようやく今の時期になって結実したという感じです。

以前のDugoに比べるとエレクトロニックなサウンドの比率が増え、また曲調もかなり明るくポジティブな感じになりました。こんな感じで自分が経験したことに対するその時々の記憶を楽曲にまとめていくのが楽しくなってきました。皆さんにも同様に楽しんでいただけたら幸いです。

P.S.
今回のブログの文章は全てiPhoneの音声入力で書き、ChatGPTで校正して作りました。作成時間数分ほど。今後の文章作成は全部これでいけそうです。

ホラーサウンド制作用の特殊楽器(Apprehension Engine)を導入しました。

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現在取り組んでいるプロジェクトでのサウンドメイキングのためにApprehension Engineと呼ばれる完全ハンドメイドのホラーサウンド生成楽器を導入しました。この楽器については昨年のGDCに参加した際にCalisto Protocolというホラーゲームの音楽制作で知られるコンポーザーチーム、Finishing Move Inc.のBrian Lee White氏にインタビューを行った際のブログに詳しく書きました。以来入手する機会をうかがってきており、今回ついに入手することができました。

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元々この楽器は映画「Cube」の音楽を担当したカナダの作曲家Mark Korven氏が考案したものですが、自分はネットを介してポーランドのビルダーと交渉して購入しました。中にはスプリングリヴァーブ、4個のピエゾピックアップと2台のプリアンプ、そしてギターにもピックアップがあり、このマシンから出せる全ての音はノイズレスのスーパークリーンな状態でアウトプットできます。また追加のピエゾを入力できるインプットも2箇所設置されています。演奏はヤスリで削ったスーパーボール、バイオリンの弓、E-Bow、音叉、スライドバーなどなど工夫次第で驚くほど多様なサウンドが作れます。現在、独自のサウンドを作り出すために積極的に実験を行っています。



まだまだ練習中ですが動画を撮ってみました。