Takahiro Izutani

Melbourne International Games Week その2

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前回に引き続きGames Weekのレポートです。Games Weekでは期間中に様々な団体によるイベントがメルボルン市内で開催されますが、その中でもPAX AUS (Penny Arcade Expo)というシアトル発のゲーム関連のコンベンション、エキジビションイベントが最大の目玉です。今回はスケジュールの手違いでここでの自分のスピーチは決まらなかったのですが、High Scoreのスピーチを見に来ていたオーディエンスがPAX会場で頻繁に声をかけてきてくれたおかげで多くの交流が持てました。今年3月のサンフランシスコのGDCに参加した時には何もつてがない状態でひとりで飛び込んだ様な形だったのでネットワーキングするにも苦労しましたが、今回は得るものが多かったです。前回のブログにも書きましたがシドニーやオーストラリアの他の街や他国から来ているひとの割合が意外に多く、ここでもゲーム産業のハブとしてのメルボルンの価値がこれから上がっていく可能性を実感しました。

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PAXでは正式な形でのビジネスミーティングの様なものはスケジュールに組み込んでなかったので会うひと会うひとと楽しく雑談してまわっていたのですが、ネットワーキングする上で外国の方と最初に打ち解けるにはお互いの国の文化のあるあるネタで盛り上がるのがとても有効です。例えばある人に「何で日本では店先に水を撒いたりするのか」と聞かれ「あれは道が舗装されてなかった時代に飲食店が衛生上行ってた事が慣習化したんだ」と説明したらとても府に落ちた様でした。オーストラリアは昔から水が貴重なのでなぜ日本みたいに街が清潔な国がわざわざ水を無駄にするのか理解不能だったとのことです。

また自分が驚いたのは現地の方がある会話の中で「オーストラリアではカンガルーはペストなんだ」と言ったことです。ペストとはまさに病原菌のペストで、つまりほっとくと増え過ぎて収拾がつかなくなる困った存在というほとんどゴキブリの様な意味で言っていて、さらには「どんどん獲って食べた方がいいけど肉が筋肉質で硬いので食べにくいんだよ」とのことで何とも意外な話でした。せっかくセンシティブな話題が出たのであえて「捕鯨のこととかはどう考えてるの?」と聞いてみたところ「一部の反捕鯨組織みたいな考えのひとはほとんどいないし捕鯨が日本の文化だってことも知ってるよ」と、しかし「でも以前に知り合いの日本人に鯨っておいしいの?って聞いたら特別に美味しいものってわけではないって言ってたんだ、だったらあえて捕る必要があるのかなとは思う」と言われてしまいました。その彼が言いたいのはつまり鯨料理が抜群に美味しければ勝手に広まっていって反対意見なんてねじ伏せてしまうだろうということでした。これには自分も参りましたが「反捕鯨活動は日本人の伝統文化に対するアイデンティティ・クライシスを誘発して逆に捕鯨文化を下支えしてる面もあるんだよ」とも伝えておきました。

High ScorePAXの間に二日間オーストラリア最東端のバイロンベイという美しい海辺の街にも休暇で行ったのですが、そこで高台から沖の海をみると鯨やイルカの群れを見ることができて、それはまさにこの世のものとも思えない程の美しい光景でした。こんなものを日常的にみていたら感情的に反捕鯨に向かう感覚もわからんでもない気がしました。カンガルーの件も含めて感情的にもつれた文化的なコンフリクトは実際に現地で体験しないと実情は伝わらないなと思いました。

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PAX最終日にはCD販売の特設会場を用意していただいたので自ら売り子として精力的に自分のアルバムや他のBrave Waveからのリリース作品を売っていきました。こういう場所ではまだフィジカルの製品は強いのですが、自分が一通り商品内容を説明したあとで実際の音を自分のスマホからSpotifyで試聴して確認してからどれを買うか決める人が多く、今の時代の複雑な音楽業界事情を反映したおもしろい現象だと思いました。購入後は早速パッケージを開けてインナースリーブにサインをするのですが「何か日本語を書いて欲しい」というお客さんには即興でその方の名前を当て字で漢字にして書いてあげてその漢字名の意味を説明してあげました。これは外国では鉄板でウケるんです。

次回、最後はPAXで参加したオーディオ系のセッションについて。