Takahiro Izutani

ベルリンのクラブ 2

前回のブログに続いてベルリンで他に行ったクラブについてそれぞれレポートしてみます。
Tresor
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90年代から続く同名のジャーマンテクノの名門レーベルの本拠地でもあるハコです。自分もかつてテクノにどっぷりだった時期にはJoey BeltramCristian Vogelなどの, 看板アーティストの音にハマってました。先述のBerghain同様にここも旧東ベルリン時代の建物をそのまま使っているのですがここは火力発電所の跡地だそうです。
フロアは一階がエントランスとクロークで二階にBatterieという比較的ライトなテクノやハウスまでプレイする明るめのフロア、地下一階がTresorというかなりハードコアなテクノ中心のフロアです。Berghainと違うのは若い人が多い事、そして立地的にも安心して入店する事ができる事もあって女性率が高かった様に思います。さほどエントランスチェックも厳しくないからかフロアの隅っこで平気でマリファナを紙で巻いている若者がいたのには驚きました。
ここでの目当ては地下のTresorルームです。上の階もかなりか廃墟感はあるのですがこの地下フロアはもろにバイオハザードに出てくる様な地下道そのものです。どちらかというと天井も低めで圧迫感がある中、この日はかなり無機質でエクスペリメンタルなテクノがプレイされていました。いわゆるビートではなくただの低周波のパルスが鳴り続けながら時折ブリープシンセの断片的なプレーズ(ビリビリッとかブリッとかいうだけ)が聞こえるだけという。踊るというより痙攣してしまいそうな音でしたw ランダムな間隔で点滅するストロボがまたかなりの光量なのでしばらくいたら目がおかしくなりそうでした。さらにこのフロアは通路が入り組んでいる上にほぼ常時うっすらとスモークが炊かれており、非現実感を作るための演出も強烈です。ここまで実験的な音を一番盛り上がる時間帯(多分午前4時頃)に持ってくるのもすごいと思いました。

Watergate
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シュプレー川沿いにあるウォーターフロントの店。フロアはひとつだけで広くもないですがソファが多く川沿いに張り出すように作られたテラスがあったりと、クラブというよりはカフェのような感じですが有名なDJがブッキングされる事が多いらしくこの日もメインDJはRichie Hawtinでした(トリノオリンピックの開会式用に楽曲提供した事で、以降認知度がグッと上がったようです)ここは音ではなくお洒落でゆったり楽しむ雰囲気が売りっぽいので自分的には特に得るものがありませんでした。落ち着いて飲みながら音も楽しむという目的ならベストだと思います。

Horst Krzbrg
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日本でいうと中目黒か吉祥寺くらいにあたる少し中心部から外れながらも近年活気があるというクロイツベルク地区にあるアットホームな雰囲気の店です。こちらも旧東ベルリン時代の建物の居抜きで郵便局だったところを改造しているようでした。自分が行った日は老舗レコードショップのHard Waxが月一で主催するWax Treatmentというイベントが行われていました。Hard WaxといえばBasic ChannelRhythm & Soundという事でこの日はダブを期待してきました。エントランスから入ってすぐ中は程よくゆったりめのバーカウンターとラウンジでその奥にメインフロアがあるというシンプルな構成ですが、メインフロアに入るまで見えない位置に巨大なスピーカー群が設置されていました。Killasanというロゴが書かれたそれらは詳細がわからないのですが明らかにレゲエ・ダブ系のサウンドシステムでした。
この日はまだ早めの時間での入店だったのでフロアにはお客さんもまばらでゆったりした雰囲気の中ナゾ度の高い民族音楽がかかっていました。DJブースを覗くと数十本のカセットテープと三台のカセットデッキが並んでおり、それらを入れ替えながらミックスしていました。後で調べたところこの時のDJはAwesome Tapes from Africaというアーティストだったらしくジャンルにこだわらずアフリカの色々な音楽をミックスしていたようですが、80sのB級ディスコだと思って聞いていたものもどうやら現代のアフリカの都市部で流行っている最新のポップスだったりしたようでw なかなかこの辺は奥が深すぎます。
この店はベルリンの中心部から少し離れた物価のやすい地区にあるからかエントランスフィーが他の店の半額以下の5ユーロと非常に安くビールも幾分安めに飲めました。またイベントの内容のせいもあってかゆっくりまったりと音を楽しもうとしてるお客さんがほとんどでした。BerghainやTresorのようなゴリゴリのバキバキのコアなところはちょっとという人にはバッチリおすすめできる良質のハコです。

ベルリンは街全体が他のドイツの大都市と比べてもまだまだ物価や家賃が安いようで(特に旧東地区)これによって世界中からクリエイターが移住してきたりクラブ、ギャラリー、イベントスペースなどアンダーグラウンドなカルチャーが生まれやすい土壌になっているようです。壁が崩壊してから二十年経っても街の至るところで都市開発の工事が行われておりまだまだ色々な新しい事が興りそうな街でした。

Real Scenes: Berlin from Resident Advisor on Vimeo.