Takahiro Izutani

2016年4月

モニタリング環境をアップデート。(2019/09/04 追記)

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Dugoのアルバム制作が遅れながらもようやく終盤にさしかかってきたので、ここでより正確なミックスチェックの環境を作ってみたいと思いメインのモニタースピーカーとして新たにBarefoot Sound Micromain 27を、サブとしてKSdigital C5-Coaxを導入してみました。自分でミックスまでやって完結するプロジェクトの場合にいつも悩みになっていたのが低音の処理でした。散々綿密にチェックしたつもりでもマスタリングスタジオにいって確認すると自宅スタジオでは見つけられなかった低音のピークがわかったりすることがあったからです。ラージモニターでないと把握できないような低音域の状況を、ミッドフィールドクラスなのにもかかわらずこのBarefootのスピーカーではかなり正確にチェックできます。しかもかなり小さな音量で聴いても帯域のバランスが変わらないので作業スペースの防音や吸音をさほど気にしなくても十分その機能の恩恵が受けられるのが素晴らしいです。

新しいモニター環境になったので慣れるために色々な曲をリファレンスで聴いてみましたが、今までに何百回ときいてきたような曲でも全く異なる印象に変わるものもありました。うまく説明できないんですが一般的なモニタースピーカーの上位互換として機能するチェックマシンの様な感じです。本質的にバランスの良いミックスのものは以前と同じ様に聴けるんですが、突出した部分があったりバランスのおかしいものに関してはそれまでは気が付かなかった問題点をハッキリと提示してくれます。それと30hz近辺の帯域で何が起こっているのかは一般的なニアフィールドのモニターではほとんど確認できてないんだなということが良くわかりました。また色々な曲をリファレンスで聴いているとその辺りの超低域でミックスの工夫を凝らしている曲は全体としても素晴らしいミックスになっている曲がとても多いです。特に最近気に入っているAdele「25」とJustin Bieber「Purpose」 は音の全体像の作り方のアイデアとテクニックの素晴らしさを確認でき、あらためて得られるものが多々ありました。この2枚はまさに「2016年の最新の音」と言うにふさわしい驚異的な作品だと思います。(リリースされたのは去年でしたっけ?)

また今回DAコンバータのLavry DA11からのケーブルもいくつか試してみた後に今まで使用していたBelden 8412から今回はGotham GAC-4/1にしてみました。これまではさほど気になっていなかったケーブルごとの音質の差も今はかなりはっきりとわかってしまいます。様々な楽曲をリファレンスする際に8412ではかなり下の帯域で突然持ち上がるピークがあってそこだけが分離したように聞こえてしまうということがありました。以前にギターのケーブルで試した際にもこの感じが肌にあわずに止めたことがあります。Gothamケーブルだとローミッドからサブベースまでが素直に繋がっているように聞こえます。

KSdigitalの方は迷った時の確認用のサブとしての用途です。長いこと同軸のTannoy Precisionををメインにしてきたので、同軸のニアフィールドで比較的新しい製品の中からこれを選んでみました。こちらもスピーカーのサイズの割にはかなりワイドレンジで奥行きもよく見えます。Barefootで大きな全体像を確認してKSDigitalでもっと近寄った状況での音像を確認する感じです。ただこちらはなぜか電源を入れてからしばらくは低音の出方が暴れて落ち着かないのでちょっとまだ戸惑っていますw まだまだどちらとも設置の仕方から試行錯誤中ですが今のところとてもいい感触がつかめています

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スピーカー両サイドにサブウーファーがあり、全部で5ドライブユニットという個性的なコンセプトです


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スピーカー口径5インチながらかなりワイドレンジです。


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両機種とも国内電圧向けのローカライズがされていないので117vに変換するステップアップトランスのCSE ST-500もついでに組み込んでみました。


Barefoot Sound's Masters Of The Craft

2019/09/04 追記
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先日、サブのモニタースピーカーをNeumann KH 80 DSPに変えました。KS Digitalの高域のクリアさと解像度は気に入っていたのですがローだけが分離した様な聞こえ方になってリファレンスとしては迷ってしまうケースがあったためです。Neumann KH 80 DSPは専用のiPadアプリNeumann Controlからネットワーク経由でスピーカーの設定を細かくコンフィギュレーションできるのが最大ので利点です。また実際に使用してみると周波数帯域ごとのクロスオーバーがとてもスムースに繋がっているためモニターとしてとてもニュートラルなリファレンスができます。メインモニターのBarefootと比べてみると明らかにローミッド(ちょうどベースの音域の中でモワモワしやすい帯域)が認識しやすいです。というか、もしかしたらBarefootは超低域のモニタリングを圧倒的な精度でできる反面、そこより少し上の帯域が沈んでる様にも聞こえることに気が付きました。やはりモニタースピーカーというものはただハイエンドのものを一択で使えばいいというものではなく異なる評価基準のもとに色々使うことが必要だとあらためて思いました。

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このNeumann KH 80 DSPですが、コストパフォマンスを考えたら圧倒的に買いです。音量を絞っていっても全体の音像の形が変わらないので、同様の聞き方ができるBarefootと併用しやすいですし、Barefootは奥行きが見えすぎる上に音像のエリアが広すぎるのに対して、もっと近くて小さい音像で聞きたい時にKH80は大変重宝しています。それと高域から低域までのバランスがとても良いので今のところは周波数に関するサージカルな使い方のときはノイマン。シビアな定位の判断と奥行きはBarefootという使い分けにしています。前述のNeumann Controlに関しては今年中に専用の環境測定マイクキットがNeumannから発売されるとのことなので増々モニタリングの精度があがるのではないかと期待しています。


ベルリン郊外のクロイツベルクのスタジオでの検証動画。クリエイターが複数で共同で活用してるスタジオのようです。クロイツベルクは東京でいうと中目黒、吉祥寺みたいな場所ですね。中規模のクラブやギャラリーなども多いエリアで近くにNative Instruments本社もここにあります。

こちらはNeumann Controlを使ってのコンフィギュレーションの説明動画ですが、他のモニタースピーカーを使ってるひとでもこの動画は必見です。自分も実際にやってみましたが、今までのスピーカーの設置に関しての自分の認識の甘さを痛感しました。LRの両スピーカーとリスナーの距離が正三角形になるようにすること、正確な角度、スピーカーから部屋の壁までの距離など、細かい要素をシビアに追い込んでいくことによって劇的にモリタリング精度が改善することを実感しました。