Takahiro Izutani

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ヨーロッパ・ツアー 2 Kafe Kult ミュンヘン

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前回のRIOのあと一旦パリに行き観光や別件の仕事のミーティングを済ませた後に2発目のショーはドイツのミュンヘン、前回とはうってかわってアンダーグラウンド感満点のハコKafe Kultにて。元々この区域一帯はドイツ空軍の病院施設だったところで、そこが開放されてからアーティストやミュージシャンなどが集まるコミューンのような形で人が多く集まる場所になっていったんだそうです。以前ベルリンに行った時のブログで変電所を居抜きで改築したクラブの事を書きましたが、ドイツでは旧東ドイツ時代の施設を利用したヴェニューやギャラリーがとても多いです。Kafe Kult以外にもこの周辺の広い敷地内には何棟かの建物があり、普通に住んでいる方もおられるようでした。オーナーのハーバートさんとは渡欧前に打ち合わせをしたかったのですがネット完全NGな人ということで常に間に人を介しての連絡だったということもあり、筋金入りのヒッピーを想像していたのですが、お会いして色々話していると実に落ち着いた知的な人物で、しかしながら筋金入りの鬼畜系音楽マニアではありました。ハーバートさんは大学ではコンピューター理論を専攻し、かつてはコンピューターの技術系の仕事をされていたそうなのですが、ある日全てを変えたくなりここに居を構えてネット圏外での生活を選ぶことにしたんだそうです。今ではKafe Kultのサイト宛にくるメールも3ヶ月に一度程度しか開かないそうですw

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この日はHFと地元ミュンヘンのテクニカルフュージョンバンド7for4の2アクト。ありがたい事に前回のフランスのRIOフェスティバルからそのままミュンヘンにも僕らを見に来られた方も何人かおられました。

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ハーバートさん、ドラマーナガセ、お名前を失念したイタリア人スタッフの方。

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膨大なジャンルのコレクションがありましたが、なぜか僕には70sのダークアンビエントとサイケの中間みたいのばかりを薦められましたw

Kafe Kult - putting munich back on the map since '99 from mpeG on Vimeo.

ライブ終了後はハーバートさんやお店のスタッフ、常連さんと飲んでマニアックな音楽談義。次の朝も車で市内を少し案内してもらいました。
ミュンヘン中央駅周辺は多人種のるつぼ、例の難民の仮宿泊施設や駅前に陣取る報道関係者などもいてザワザワしていましたが、少し中心部から離れると素晴らしく美しく整然としたヨーロッパの街並みが保たれていました。

つづく

レ・ミゼラブルを見てきましたよ。

遅ればせながら現在公開中の映画「レ・ミゼラブル」を見てきました。ミュージカルという事とかなり音楽の分量が多いという程度の事前情報だけで見に行ったのですが、最初から最後までほぼ全編歌いっぱなしでしたので二時間半のミュージックビデオを見たような感覚になりました。

さらにこの映画では役者が自分の芝居のペースとテンポ感で歌ったテイクにあとかぶせでオーケストラをあてており、完全にドライな声にきっちりミックスされたオケがのって同期しており、既存の先録り口パクあわせのミュージカル映画とも舞台のミュージカルとも違うので何とも不思議な感覚になってしまいました。この奇妙な感覚にさせられたせいでストーリーに集中できず「これどうやって同期してんだ?」なんて事ばかり考えながら見るはめになってしまいました。エンドクレジットにStage Pianistという表示があったのでようやく仕掛けがわかったのですが、芝居を見ながらバックステージで伴奏してくれるピアニストの音を役者がイアホンでモニタリングしながら歌い、録音されたピアノをオケに差し替えてるとのことでした。

しかし普通に交わしている会話がずっと歌になっていてさらに三人目の歌が絡んできて最後は三声できれ〜にハモリになったりするとあまりの違和感で笑ってしまいそうになりました。また通常ミュージカル映画では芝居のシーンと歌唱シーンが交互に入り、現実とファンタジー部分をそれぞれ担っていますが、この作品では全てが現実感覚のまま虚構みたいなもので、ある意味「歌で会話する世界」という異次元の話みたいな事にもなってますw 手法が斬新ゆえに見る方の順応力も問われますね。
こっちはメイキングです。役者さんは音聴きながら芝居できるからやりやすかったとのこと。

イアホンを買いましたよ。

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今の仕事をするようになってから外出時に携帯音楽プレーヤーで音楽を聴く習慣が全くなくなっていたのですが、先日携帯をiPhoneにした上に Etymotic ResearchのER-4Sというイヤホンを購入してから何かと音楽を聴きまくる様になっています。
自分は今まで仕事の際でもヘッドフォンをほとんど使わずに作業しています。ヘッドフォンだと低音の質感がつかめなかったり奥行きも見えづらかったり、あと物理的な装着具合によって定位のバランスまで掴みづらかったりするのが理由です。
ですが、このER-4Sはそれらのマイナス要因を全てクリアしており音源の音質的な質感や音量レベルの差異まで如実に再現してくれるので今後は仕事でも活躍してくれそうです。低音の質感に関してはまだモニタースピーカー無しでは完璧な判断はしづらいですがその他の要素で特に定位に関しては何年も普通に聴いてきた曲の定位ずれをいくつか発見してしまったほどの正確さです。
それと今となっては全部mp3になってしまってますが、最初にリリースされたのがアナログレコードか、CDに完全に以降してからか、Protools以降のものか。大きくわけてこの3つで音量レベルと質感に相当違いがある事にもあらためて気づきました。Protools以降のものについては制作時にタイミング補正がなされてる事の影響も大きいと思います。

そんなわけで「どうせiPhoneで音楽なんか聴かないし」と32GB仕様のものを選んだ事を後悔しているわけですが、32GBパンパンにつめた音源ファイルをシャッフル再生しているうちに次第によく聞くお気に入りアーティストが決まってきました。
まず XTC、若い頃にウォークマンで聴いていた時は中期の Black SeaBig Expressをよく聴いていたのですが、ちょうどむかし自分がウォークマンを使わなくなってからリリースされた Non SuchApple Venusの1と2などの、シンプルなアイデアと構成の中に多彩な色を散りばめたような複雑な展開を作るアレンジ力とアイデアの凄さに唸っています。
それと Brandt Brauer FrickBopのMVカッコよさにやられて今年の来日時に代官山Unitのライブまでいったくらいですが、アルバムの他の曲にはいまいちピンときてませんでした。もともとミニマルな楽曲群なのでさっとチェックするくらいでは意味がないのですが、聴きこむ程に各サンプルやフレーズの磨きこみが際立っているのがわかります。それと楽曲構成とミックスの相関関係が実に複雑で細かく作ってあるのもわかります。
最後に Craig Streetのプロデュースした諸々の作品です。このところフルアコースティックの曲をミックスする機会が続いた事もあってリファレンスでよく聴いていたのですが、ルームリヴァーブをうまく使った楽器同志の距離感と音を必要最小限に削ぎ落した超クールなアレンジがたまらんです。おすすめは Madeleine Peyrouxの最新作、 Gipsy KingsのRootsLizz Wrightのファーストとセカンド(ミックスが Tony Maseratiでマスタリングは Greg Calbi)などです。

世間的には今さらという感じではありますが、iPhoneで生活習慣が変わる感覚を実感しております。おせ~w

ベルリンのクラブ 2

前回のブログに続いてベルリンで他に行ったクラブについてそれぞれレポートしてみます。
Tresor
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90年代から続く同名のジャーマンテクノの名門レーベルの本拠地でもあるハコです。自分もかつてテクノにどっぷりだった時期にはJoey BeltramCristian Vogelなどの, 看板アーティストの音にハマってました。先述のBerghain同様にここも旧東ベルリン時代の建物をそのまま使っているのですがここは火力発電所の跡地だそうです。
フロアは一階がエントランスとクロークで二階にBatterieという比較的ライトなテクノやハウスまでプレイする明るめのフロア、地下一階がTresorというかなりハードコアなテクノ中心のフロアです。Berghainと違うのは若い人が多い事、そして立地的にも安心して入店する事ができる事もあって女性率が高かった様に思います。さほどエントランスチェックも厳しくないからかフロアの隅っこで平気でマリファナを紙で巻いている若者がいたのには驚きました。
ここでの目当ては地下のTresorルームです。上の階もかなりか廃墟感はあるのですがこの地下フロアはもろにバイオハザードに出てくる様な地下道そのものです。どちらかというと天井も低めで圧迫感がある中、この日はかなり無機質でエクスペリメンタルなテクノがプレイされていました。いわゆるビートではなくただの低周波のパルスが鳴り続けながら時折ブリープシンセの断片的なプレーズ(ビリビリッとかブリッとかいうだけ)が聞こえるだけという。踊るというより痙攣してしまいそうな音でしたw ランダムな間隔で点滅するストロボがまたかなりの光量なのでしばらくいたら目がおかしくなりそうでした。さらにこのフロアは通路が入り組んでいる上にほぼ常時うっすらとスモークが炊かれており、非現実感を作るための演出も強烈です。ここまで実験的な音を一番盛り上がる時間帯(多分午前4時頃)に持ってくるのもすごいと思いました。

Watergate
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シュプレー川沿いにあるウォーターフロントの店。フロアはひとつだけで広くもないですがソファが多く川沿いに張り出すように作られたテラスがあったりと、クラブというよりはカフェのような感じですが有名なDJがブッキングされる事が多いらしくこの日もメインDJはRichie Hawtinでした(トリノオリンピックの開会式用に楽曲提供した事で、以降認知度がグッと上がったようです)ここは音ではなくお洒落でゆったり楽しむ雰囲気が売りっぽいので自分的には特に得るものがありませんでした。落ち着いて飲みながら音も楽しむという目的ならベストだと思います。

Horst Krzbrg
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日本でいうと中目黒か吉祥寺くらいにあたる少し中心部から外れながらも近年活気があるというクロイツベルク地区にあるアットホームな雰囲気の店です。こちらも旧東ベルリン時代の建物の居抜きで郵便局だったところを改造しているようでした。自分が行った日は老舗レコードショップのHard Waxが月一で主催するWax Treatmentというイベントが行われていました。Hard WaxといえばBasic ChannelRhythm & Soundという事でこの日はダブを期待してきました。エントランスから入ってすぐ中は程よくゆったりめのバーカウンターとラウンジでその奥にメインフロアがあるというシンプルな構成ですが、メインフロアに入るまで見えない位置に巨大なスピーカー群が設置されていました。Killasanというロゴが書かれたそれらは詳細がわからないのですが明らかにレゲエ・ダブ系のサウンドシステムでした。
この日はまだ早めの時間での入店だったのでフロアにはお客さんもまばらでゆったりした雰囲気の中ナゾ度の高い民族音楽がかかっていました。DJブースを覗くと数十本のカセットテープと三台のカセットデッキが並んでおり、それらを入れ替えながらミックスしていました。後で調べたところこの時のDJはAwesome Tapes from Africaというアーティストだったらしくジャンルにこだわらずアフリカの色々な音楽をミックスしていたようですが、80sのB級ディスコだと思って聞いていたものもどうやら現代のアフリカの都市部で流行っている最新のポップスだったりしたようでw なかなかこの辺は奥が深すぎます。
この店はベルリンの中心部から少し離れた物価のやすい地区にあるからかエントランスフィーが他の店の半額以下の5ユーロと非常に安くビールも幾分安めに飲めました。またイベントの内容のせいもあってかゆっくりまったりと音を楽しもうとしてるお客さんがほとんどでした。BerghainやTresorのようなゴリゴリのバキバキのコアなところはちょっとという人にはバッチリおすすめできる良質のハコです。

ベルリンは街全体が他のドイツの大都市と比べてもまだまだ物価や家賃が安いようで(特に旧東地区)これによって世界中からクリエイターが移住してきたりクラブ、ギャラリー、イベントスペースなどアンダーグラウンドなカルチャーが生まれやすい土壌になっているようです。壁が崩壊してから二十年経っても街の至るところで都市開発の工事が行われておりまだまだ色々な新しい事が興りそうな街でした。

Real Scenes: Berlin from Resident Advisor on Vimeo.


ダークナイトの音楽

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先日IMAX109シネマズにかねてから楽しみにしていたダークナイト・ライジングを見に行ってきました。
このシリーズは映画としての完成度はもとより前作において革命的な音響手法を用いた映画音楽が作られた事で多方面の音楽制作者から大注目されています。


前作ダークナイトのサントラの一曲目「Why So Serious」です。素材としてオーケストラ楽器を基本にはしていますが、それらは断片としてブツ切りにされてミニマリスティックな楽曲の要素として再構成されています。
特に自分にとって衝撃的だったのはエレキベースかと思われる音のグリスアップのあと3.:27からの部分。ここはヘッドフォンで聴いてたりするといまいち地味でよくわからないんですが、ほとんど可聴帯域以下の低音だけが鳴っており自分が最初に聴いた時には自宅スタジオのモニターでかなりの爆音で聴いてたので突然この部分がカットインした瞬間になにか天変地異でも起こったかのように部屋が地響きたてて震えだしたのです。
この手の極端なフィルタリングを使ったブレイクは昨今のダブステップなどにはよく聞かれますがオケ系の映画音楽でここまで大胆に使われたのは初めてではないかと思います。
自分はここ10年くらいの映画音楽は割りとチェックしていまして、ダークナイトより数年前にオーケストラ楽器でのミニマル・ミュージックを取り入れた映画でレクイエム・フォー・ドリームという名作がありました。
クロノス・カルテットが演奏する悲壮感をまといつつ淡々とした楽曲はストーリー展開やシーンとの音との合わせ方という点でこの作品はダークナイトととても近いです。ひょっとしてハンス・ジマーはレクイエム~から多少のヒントを得てるんじゃないかと勝手に思ってます。
ですがこの「Why So Serious」はもう楽曲単体として革命的で、それ以前にはなかった音楽です。なんでも楽曲のキューシートには作曲者のハンス・ジマー、ジェームス・ニュートン・ハワードの他に3人のサウンド・デザイナーの名前が記されているそうで、セッションの中でどんなエディットが行われたのか非常に興味深いです。

そんな前置きもあって見に行ったダークナイト・ライジングですが、実際に映画を見る前にサントラで音だけは聴いており、今回は前作ほどの衝撃的な音楽ではなくダークアンビエント的な重厚さを持ちながらも割りと正統的な音楽という印象を受けていました。
が、実際に映画を見るとサントラで聴いた時の印象とは大きく異なる迫力があり、映画の世界観に引きずり込まれます。前作と比べて特に進化しているのは映像、効果音と楽曲がひとつの世界観を作るべく同化してるところです。
特にクライマックス近辺でのカーチェイスのシークエンスではジェット音とエンジン音と音楽が相乗効果的に鳴り響き、まさにジェットコースター状態の迫力です。本当に楽曲と効果音の境目がわからず、ただただ音の坩堝に巻き込まれるような感覚になるのです。
あとで調べてみたエンジニアのAlan Meyersonへのインタビューによると本編全体で4000にも及ぶトラックを使っていて、例えばあるシーンのオーケストラで40トラック、別録りしたパーカッションで20トラックなど大小のグループがたくさんあり、それらと、これまた複数のSEのグループを同列にMAでミックスしていき、長大な一つの楽曲として構築していったとのことです。それが5.1ch分ということなら4000トラックも頷けますね。
一昨年アカデミー作曲賞を受賞したソーシャル・ネットワークという映画ではトレント・レズナーはデジタルノイズと電子音が交錯する楽曲でサイバー空間での交流のシーンを表現していましたが、映画の中ではどうにも安っぽくなってしまい浮いてるように感じました。
音楽のスタイルとしては正統的なオーガニックサウンドを中心にしながらも、より映像や効果音と同化するべく膨大な労力と高度なテクニックを駆使するという方向性は自分にはより先進的に思えます。

SoundWorks Collection - The Sound and Music of The Dark Knight Rises from Michael Coleman on Vimeo.




それとハンス・ジマーは自分が唯一使用しているヴァーチャルシンセ。いわゆるコンピュータのソフトシンセとしてu-heのZebra2をあげているのですが、最近u-heからダークナイトシリーズのためにジマーとサウンドデザイナーのHaward Scarrが作った音全てを含んだプリセットライブラリーとしてThe Dark Zebraがリリースされてます。
Zebraは何を隠そう自分も相当な高頻度で以前から制作に使っております。数年前ですが、Blassreiterというアニメ作品に提供した「Blood Infection」という楽曲ではほとんどの構成音をZebraで作りました。このタイプのソフトシンセはほぼ無制限にエンベロープが書けることで細かい音の揺れや動き、スピード感が出せることが魅力です。



追記
上記で引用してるレクイエム・フォー・ドリームですが作曲者のクリント・マンセルはなんと元Pop will eat itselfのボーカリストでした。もう今や知らない人の方が多いと思いますが、90年代初頭に活躍したデジロックの先駆けで、歌詞の内容や悪ふざけのタイトルのせいでおバカなイメージでとらえられてたバンドです。最近の作品ではブラック・スワンを手がけてますね。何があるかわからんもんです。