Takahiro Izutani

Dugo

ニューシングル "Refractive Error" がリリースされました。


まもなくリリースされるDugoの5曲入りEP"Exploration"からの1stカットシングル"Refractive Error"がリリースされました。
Dugo's first single "Refractive Error" from the upcoming five-track EP "Exploration" is OUT on Spotify. 

海外での楽曲使用を収益にしていくには?

イタリアの伝統的な古楽器を演奏するグループEcovanavoceとのコラボレーション作品をまとめたアルバム"Mother Moon"がリリースされました。Ecovanavoceについてはこのサイトで何回か紹介しましたが、実はもう最初にやりとりを始めてから10年近くも経っています。"Mother Moon"に収録されている曲はすでにRaiというイタリアの国営放送局の傘下にあるRai Publicationという音楽出版社で管理されていてEU圏内の国の放送局のテレビ番組などで割と頻繁に使用されています。今回はその楽曲群を各種ストリーミングサービスに使う権利の整理ができたのでアルバムとしてお届けできる運びとなった次第です。
Rai Unesco 19 - Portovenere, Cinque Terre e le Isole Palmaria, Tino e Tinetto

Palermo Renaissance - Documentary - Arté and Rai 1 - Trailer from Andrea Rovetta on Vimeo.

少し前にはDugoのファーストアルバム"Lingua Franca"がドイツの国営放送のドキュメンタリー内で使用されたことをお伝えしましたが、過去に色んな形で出版管理を委託してその後ほったらかしにしてある楽曲たちがあるので、そろそろ統括して正当な権利報酬を得るための行動をしていかねばと考えています。

また他方で先日はゲーム音楽関係の出版管理をしている米国のとあるベンチャー企業から楽曲の管理を申し出たいという旨のオファーを受けたのですが、いまEU圏内ではPlayStation Networkで配信されているタイトルに関して、それが制作時に作曲家が完全買い取りの権利譲渡契約で制作した音楽に対しても著作権管理団体やゲーム制作会社とは関係なくSIE (Sony Interactive Entertainment Inc.) が独自に負担して音楽制作者に報酬を分配する枠組みができているそうです。ゲーム音楽に関しては基本的に制作時の完全買い取り契約が今でも慣例なんですが、最終的にユーザに届く形が音楽サービス同様にストリーミングになってきたりと時代の変化によって従来の法体系の枠におさまらなくなってきた結果、そういった新しい報酬システムができているみたいです。

またドイツの著作権管理団体GEMAでは著作者がたとえ非会員であってもその著作者が信託を与えたドイツの音楽出版社が代理で全世界からロイヤリティを回収できる制度ができたとのことです。これも買い取り契約が基本ゆえに著作権管理団体の会員になれないゲームコンポーザーには画期的な朗報です。これはちょっと専門的過ぎるトピックではありますが、色んなところに網を張っておいてこういう情報にもキャッチアップしていくことが後々の収益に大きな差を生んでくるのかと思います。

どこの放送局でどんな風に自分の音楽が使用されたかを確認するのには自分の場合TuneSatというウェブサービスを使っています。ここで自分が音楽出版会社に委託をしてある楽曲のmp3をアップロードしておくと、それが世界中のどこかの放送局で使用された時に自動検索で探知して実際の使用部分の音と放送局名、番組名、日付けなどが一括で確認出来るんです。あまり知られてないかも知れないですが非常に便利で、音楽出版社側でも調査確認のために使ってると聞きました。また楽曲が使用されたということは、それを気に入って取り上げてくれた人間がいるわけなので、番組名などからたどってLinkedInやFacebookで探しだした担当者に直接アプローチして売り込みをかけることも可能です。自分はまだそこまではできていませんがこういう売り込み方のTipsは洋書の「音楽業界サバイブ方法」みたいな本には頻繁にでてきますw

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TuneSatの画面。こんな風に実際の使用部分の音を再生して確認できます。

話を戻すと"Mother Moon"はEcovanavoceの楽曲を自分がリミックスする形で新しく生まれ変わらせた作品です。こちらの原曲と比べて聞いてみるのも楽しいと思いますのでよろしかったら是非。Ecovanavoceというのは造語だそうですが、回文になっていて「古い文化と新しい文化」「西洋と東洋」などが鏡写しの様に融合したハイブリッドな音楽を目指すというコンセプトで名付けたそうです。このネーミングの粋な感じに共感したのがコラボのきっかけでした。

NFTはじめました。

NFTマーケットプレイスの最大手、OpenSeaにてDugoのNFT作品の販売をはじめました。

最初の作品はPrism Remix Collectionという3トラックのセルフリミックスです。Prismというトラックは昨年、緊急事態宣言下に京都の龍安寺金閣寺を訪れた時の体験を元に制作したもので、Dugoのここ一年半の間にリリースされたものの中で最もSpotifyで再生されているものです。今回はこのPrismのテーマとなっている旋律を元にそのバリエーションをリミックスとして制作し、さらにNFTコレクションとしています。

さてその前にNFTとはなんぞやと思われる方、聞いたことはあるけど具体的にはよくわからないという方も多いかと思います。一般的な語義、定義としてはNon-fungible tokenの略で(非代替性トークン)ということですが、要するにブロックチェーンの技術を使うことでデジタルデータの不正なコピーや改ざんができなくなり、データのトレーサビリティも格段に上がったことで、その唯一性が担保されたことにより、物理的な芸術作品などと同等に扱って売買できるようになったデジタルアートなどの総称、ということになります(あってるかな?)

一般的にはジャック・ドーシーのツイートが3億円で売れただの、子供が書いた絵が160万ドルで売れただの、一攫千金的な投機ツールだと見られがちですが、自分はもっと芸術作品にとって本質的に重要な価値と可能性を内包しているものだと考えています。

以前に現代美術家の村上隆さんの著作「芸術起業論」を読んでの感想を本ブログに書いたのですが、その中で語られていたテーマに「芸術のコンテキストに沿っていかに作品のストーリーを組み込むか」というものがありました。例えばアンディ・ウォーホルの「キャンベルスープの缶」はただのスープ缶を作品とすることで当時の抽象主義をアンチテーゼとして揶揄した事がコンセプトの骨子だった様に、NFTも作品は単なるデジタルデータであっても、そこにどんなコンテキストとストーリーを紐付けるかで作品の必然性と価値が決まってくるものです。そしてその思想的な価値やアイデアに対しての共感の証として作品を購入することが購入者の自己顕示欲を満たすものでもあると思います。物理の実体が存在しないデジタルデータの作品であればそれだけコンテキストとストーリー性をいかに作品に色濃く反映させるかが重要になります。今回NFTを始めた一番の理由は自分の創作活動において、その部分にさらに注力していくいい機会になると考えたからです。

かつて、巷では意外なくらい多くのグループ名やユニット名、曲名までもが単なる言葉遊びや語感の響きの面白さで安易につけられていることに違和感を感じていた自分はユニット名に関してかなり真剣に考え、重層的な意味付けを与えながらDugoと名付けました。また曲名とそれに紐づく表現方法についても常にユニークであるように試行錯誤する時間を多くとっています。NFTというフォーマットはそんな自分にとって作品のコンセプト作りをより深く考える必要にせまられるという点でとてもチャレンジのしがいのある新しい場所だと感じています。

他のアーティストの例などをあげると、自分が常日頃から現代のエレクトロニック系ミュージシャンのあるべき形の好例として非常に注目しているMax Cooperも最近、最新アルバムのリード曲のミュージックビデオから切り出したデジタルアートをNFTとしてリリースしています。これはアルバム、ミュージックビデオ、NFTをそれぞれ関連付けて段階的にリリースしてオーディエンスの興味をひくようにするというとても上手いプロモーションの戦略も組み込んでいます。

またMax Cooperと同じレーベルMeshのLlyrというアーティストはフィールドレコーディングのためにボルネオ島に行き、そこで録音したコウモリの鳴き声や鍾乳洞の水滴や水流の音などを大量に集めてデジタルプロセシングしたものを音素材として斬新なエレクトロニック・ミュージックを制作しています。これもまた現代美術的な文脈としてとても訴求力のあるコンセプトだと思います。彼のインスタグラムではボルネオ紀行の際の写真や体験談がシェアされています。それらのサイドストーリーなどを含めて全体として作品が成立しているのがとても現代的でスマートです。彼もまたボルネオ紀行にちなんだ音と画像を組み合わせて映像にしたNFT作品をリリースしています。

さらにJon hopkinsは同様に2016年にエクアドルに訪れてフィールドレコーディングした際のデータを用いて、昨年Music for Psychedelic Therapyというタイトルで最高に素晴らしいアンビエント作品をリリースしていました。コロナ以前に収録した素材にもかからわず、2021年にこのタイトルでアンビエント作品を出してくるというのが実にタイムリーです。

これはドイツのエレクトロニック系ピアニストNils Frahmの2018年の作品ですが、録音は旧東ベルリンの1950年代のレコーディング施設「Funkhaus」で行われ、特注のミキシングデスクに至るまで彼が2年がかりで理想の部屋を作り上げたとのことです。一度録音されたピアノはFunkhausのナチュラル・リバーブ・チャンバー(音を投影して再録音するためのコンクリート製の部屋)を利用して再録音したり、またスペインのマヨルカ島にある友人宅の枯れ井戸を利用して自分自身で実験的に再録音して作ったバージョンもあるそうです。今の時代、単にそれっぽい音を作るためだけならコンピュータ上でシミュレートできるソフトウェアが山ほどあるにもかかわらず、膨大なリソースを割いてあえて唯一無二のサウンドを求めるこういった姿勢も歴史的に西欧の美術界、芸術界に通底している、作品のストーリー性を重んじる考え方の発露なんじゃなかろうかと強く思います。

あっ、それとPrism Remix Collectionのコンセプトについてはリンク先のDescriptionに説明してあります。英語記載ではありますがよろしかったらこちらもご覧になってみて下さい(DeepLコピペ推奨)

こちらはPrismオリジナルミックスのミュージックビデオです。

楽曲の完成にどのくらいの期間、時間をかけるべきか?


12/30にDugoの"Early Works"EPがリリースになりました。以下のSpotifyリンクからお聴きになってみてください。

"Early Works"EP by Dugo

今回のEPはファーストアルバムの"Lingua Franca"以前に制作した未発表曲を集めたもので、最終的な完成の時期はまちまちなのですが、最初のデモが完成したのはもう15年ほど前になります。これほど古い音源をまさか2021年にリリースすることになるとは思いませんでしたが、リリースの限界費用が限りなくゼロになったストリーミングの時代、かつロングテール戦略が当たり前になった今やカタログに加えない理由は何もないので多少のマスタリング的なお化粧直しとカバーフォトを加えて今回リリースすることにしました。

当時の自分はJ-Popのアレンジャー、トラックメーカーとしての仕事がメインで、歌ものへのアプローチが上手くできず苦心していたおり、基礎研究的に自分自身のための音楽制作も同時並行しようと思いDugoという名前をつけてトラック制作を始めたのでした。中にはMac OS9から書き出して完成させたトラックもありますが、意外なほどにさほど音質的な隔世感はないと感じています。完成の時期はまちまちと書きましたが、これらの中には3日程度で完成させたものから、一年以上かけて完成したものまであります。

自分は楽曲制作を「ゴールを探してさまよう旅」の様なものだととらえています。それはある曲では最初のアイデアがどんどん変化していき、全く予想もつかなかった形で完成したり、一瞬で思いついたアイデアを集中して一気に短時間で完成させたり、はたまた数週間、数ヶ月おきに制作して数年かけて完成したりと、完成までの道のりやその間のトラブルはその時々、曲ごとに全く異なる経過を辿るからです。そして旅のさなかに出会うひとや初めて見る風景に影響を受けたり、その旅路で自分自身との対話を経てクリエイターとして成長できることもあります。またこれら完成したものの裏では旅の途中で行き止まりにハマって戻れなくなってしまい頓挫した楽曲が山のように積み上がっています。

"Early Works"の楽曲達は相当以前に形にはなっていましたが、結局は今回のリリースによってようやく長い長い旅を終えたことになります。以前に自分のデモ音源として頻繁に配っていた時期もあるので、もうすでにお聴きになられた方もいらっしゃるかも知れません。自分にとっては今回のリリースはそんな風にしてデモ音源を受け取っていただきお世話になった方々のことを思い出す様な懐かしい機会にもなっています。

最近の自分の制作プロセスは多くの複数の楽曲を同時に進めておいて、それぞれに対してふと閃いたアイデアをその時々で加えていくというものです。上でも書いた様にとにかくリリースの限界費用がほぼゼロなので例え80%の出来でも試しにどんどんリリースしたりして、多くの人の耳に触れる機会を増やすのが重要です。またSpotifyのアルゴリズム的にもこの「チャレンジする回数」というのは大きく関わってきます。もちろん一曲に対してドップリと集中して取り掛かるのもそれはそれで必要な時がありますが、今の時代はまずは楽曲数を増やしていくのが良いと思います。

また場合によっては後々それらをアップデートしたものに差し替えるようなことすら可能です。例えば今回のEarly Works EPの中ではSugar Roadというトラックはかつてひとまずは完成した後に、イタリアの古楽器で現代的な楽曲を制作して活動しているEcovanavoceというクラシックの音楽家集団とのコラボレーションを経てDugoのファーストアルバムにGliding Birdというタイトルでアップデートバージョンとして収録されています。とにかくまずは初期段階のアイデアを大量に集めておいて同時進行で進めていき、決定的な閃きが降りてくる「その時」まで手を変え品を変えて創作の手を動かし続けるのが良いと思います。

そんなこともあってDugoは何とか新曲制作の方も完成したものが積み上がってきています。次回のリリースはまだどういう形にするか検討しているところなのですが、できればアルバムとしてまとまった分量でお聴きいただける形を目指しています。

来年も聴いていただける皆さんにポジティブな貢献できるような音楽を精一杯お届けしていこうと思います!

それではよいお年を。

Dugo - 'Dawn' (Official Video)


大量のアウトプットを生むための過去ストック活用法



Dugoのニューシングル"Gleam In The Deep Sea"が4/29にSpotifyでリリースになります。

こちらはSpotifyリリース前のプリセーブ用のリンクになります。

今回のトラックは実は10年以上前にとある映像作家の方とのコラボレーション用に制作したものが元になっていて、それを今のツールと今の音楽性で大きく刷新して再構築しています。かつては昔の素材やアイデアを使い回すようなことには抵抗があったのですが、いまは自分が何らかの形で制作してきたものは未完成のもの、断片、音色のデータまで含めて全て資産だととらえているので今後も積極的に活用していこうと考えています。

かつて聞いた話では、スティール・パン奏者で前衛音楽家のヤン富田さんは数万枚のレコード、CDコレクションから任意の楽曲がどこに収録されていてどこに収納されているかを瞬時に見つけ出せるようにして「使える知識」として管理していたそうです。同様に制作に関しては過去のアイデアの断片を瞬時に引っ張り出してきて再構築できるように脳内とストレージ内を管理しておくことが大量にアウトプットしていくために必須だと考える様になりました。若さを失うのと引き換えに得た「積み上げた知識と経験の資産」こそが自分のオリジナリティの源泉として強力な武器になると実感しているからです。

過去の資産の有効活用ということで言えば、近年では音楽活動上も同様の変化が起こっています。現代の音楽活動の主流がCDなどのフィジカルなリリースからストリーミングサービスやソーシャルメディアでの投稿によるネット上のプレゼンスに重きが置かれるようになってから、パッケージ製作、流通、プロモーションなどにかかるコストは激減、もしくは限界費用ゼロにまで下がりました。そんな誰でもが同等に音楽活動ができる状況下ではアーティストはとにかく潜在的なオーディエンスの目に触れる機会が重要であり、リリース量や制作物の質、その方向性を制限して管理する意味がなくなっています。いわゆるロングテールの戦略をとって過去の資産も最新のものと同等に扱い、いつどんな作品がバイラルになってもいいようにしておけばいいのです。

また音楽ジャンルの多様化や、古いものと新しいものが完全に同じプラットフォームで同居できるようになったことで、何が最新の音楽で何が時代遅れなのかという区分けが消滅し、最新の音楽を知っているということに対するスノッブな選民思想も過去のものになり、個々のアーティストがクールかダサいのかはその活動スタイルに大きく依存するようになっていると感じます。

その指標となるもののひとつに作品の発表の場として何を重視するかということがあります。ライブをメインにするというのはCOVID-19以降はほぼ不可能になりつつありますし、事態が終息したあとでも何かしらの制限がついてまわるはずです。ヴァイナルの販売やマーチャンダイズがメインというのもひとつの手でしょう。自分の場合はInstagramの各種投稿とSpotifyでのリリースを圧倒的に重視しています。Instagramでは短い動画付きでちょっとしたサウンドロゴや数十秒の楽曲をアップしていますが、それもオーディエンス獲得のためのゲートウェイとして注力し、手間と時間をかけて制作しています。そして見せ方を変えたりしつつ段階的に尺の長いコンテンツにつなげていき、最後にSpotifyがランディングページとなるようなイメージで導線を作っています。ここの個人ウェブサイトを作ったときに実はその様な用途で色々なコンテンツの発信の場として機能するようにするプランもあったのですが、当時はまだそのような考え方は一般的ではありませんでした。今の様にユーザが共通のプラットフォームでコミュニケーションをとれるようになって初めてワークするアイデアだったかもしれません。

さて、昨年の10月にDugoの活動再開となる"Recluse EP"をリリースして以来ほぼ7ヶ月が経過してようやくSpotifyの月間ユニークリスナーが15000人を超えるところまできました。まったく先が見えないままでひたすら制作を続けて可能性を探るのはなかなかきつかったのですが、あと少しでデータを見ながら戦略をうてるくらいの数字に達することができると考えています。またもうすでに次回リリース予定のEPの制作が佳境に入っているので、近いうちにそのこともお知らせできそうです。どうぞご期待下さいませ!

予算をかけずに個人でもできるオンライン音楽マーケティング

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Interview on Indie Top 39 by Emma MIller
こちらはUK発のレビューウェブサイトIndie Top 39に掲載された最新のインタビュー記事です。


久々となったDugoの新作EP Recluseのリリース後、もろもろのプロモーション活動も一段落したのでここで総括してみようと思います。

今回はレーベルからでなく完全に自主でのリリースとプロモーションになるのでまずは自分のマーケティングに関するリテラシーを高めることと、いかに予算をかけずに各所にとりあげてもらうかということにポイントをしぼって進めました。

オンラインでのパブリシティというのは紙媒体と違って一度アップされると理論上は半永久的にでもネット上に存在しえることが可能です。なので今後も活動を続けていく上で認知を広げていく際には必ず誰かに過去情報が検索されることになるので、しっかりとした中身のあるものを提示しておく必要があります。一回こっきりアップした時にだけ周知をして読まれれば良いというものではなくロングテール的な姿勢で少しづつコンテンツとして積み上げていくことで目に留まる頻度を高めていくべきです。

個人からでも請け負ってもらえるプロモーション会社は色々とありますが、今回は費用がさほどかからず手軽に使えるウェブ上のサービスを試してみましたのでいくつかご紹介します。今回掲載された記事の中から主要なものは https://dugo.tokyo/ に引用してありますのでご覧になってみて下さい。

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これは巷では最も知られたサービスだと思いますが、元々はGoogleで働いていたプログラマーが独立して立ち上げたという如何にもドラマ「シリコンバレー」に出てきそうな会社で、最初にポイントを購入したのちサイトのリスト上に掲載されているメディアの中から自分が気に入ったものにオファーを送り先方が楽曲の内容に対して気に入ってくれれば記事やインタビューとして掲載されることになります。ここの特徴としては音楽のジャンル、影響力の評価、採用率、抱えているオーディエンスの総量など様々なパラメータが比較できるように数値化されていて、それをフィルタリングして自分にとって最適と思えるメディアを選べるところです。またレビューサイトだけでなく、個人ブロガーやInstagramのインフルエンサー、Spotifyのプレイリスター、果てはSoundCloudでのリポストなど様々なツールを介してのメデイアがあり、今回自分が取り上げてもらったものの中では世界中の山岳地帯を旅している冒険家のInstagram Storiesの映像のBGMとして取り上げてもらったりというものもありました。おそらくTikTokからみでのインフルエンサーなども多いでしょうし、昨今は数年前までは思いもつかなかったような場所ですら大きな影響力を発揮しているひとがいることがわかりました。

あとSubmitHubは採用率がなかなか厳しかったのと、自分の場合は試聴してもらうのと同時に不採用の場合も必ずその理由をレビューしてもらえるコースで提出していたのですが、これは最初はメンタルがやられそうになりました。普段仕事で制作している楽曲であれば、どんな理不尽な不採用や意味不明なリテイクであっても何の動揺もなく機械的に対処できるのですが、いざ自分の音楽として作った楽曲によくわからない理由でダメ出しされることがこんなに精神的にこたえるとは思わなかったです。これはとてもいい経験になりました。

こちらもシステムとしてはSubmitHubと同じ形式ですがリリースする楽曲を提出してパブリシティとして扱ってくれるメディアを募るという一種のお見合い的なプラットフォームです。こちらの方がおそらく新しくできたサービスで、それゆえか比較的個人ブログなどを含む小規模のメディアからかなり多くのオファーをもらいました。またここはリリース期間内に全くオファーがもらえなかったとしてもここのサービスからの紹介で必ずいくつかは記事が掲載されるという最低保障の様な制度があるようです。

こちらは少し名が通ったメディアやレーベルをメインにしたサービスです。ジャンルや国別のフィルタリングがとても使いやすいのと、自分が気に入ったものをみつけたら個別にアプローチできますが、名が通ったものに関しては楽曲を聴いてもらうだけで$10〜$15ほどの費用がかかります。今回ここでは2社だけ試しにオファーしてみましたが採用はされませんでした。


今度はサブミッション系のサービスではなくロンドン発のコンサルティングを含むマーケティング会社です。ここはYouTubeに多くの音楽マーケティング戦略の動画をアップしているので、それを見るだけでも相当な知識と情報を得られますが、個別にサービスを依頼することでアーティストの現状に特化したアドバイスと戦略のドキュメントを作成してくれます。またその際に必ず30分ほどのオンラインミーティングを行います。自分の場合は活動全体の指針と各ソーシャルメディアのアカウント上のどこを直した方がいいかなど具体的な部分についてまで詳細にアドバイスをもらいました。今回はここでは£500を使いましたが、これを高いとみるか安いとみるかはちょっと判断が難しいところです。まずはYouTubeの動画を見まくった後で判断してみればよいと思います。

フォーマット化されたサービス以外ではMuck Rackというジャーナリストのデータベースサイトを活用してみました。ここではDugoに近いジャンルの音楽記事を書いているジャーナリストを調べて直接連絡をとってみたところ二人のジャーナリストに記事として取り上げてもらうことができました。また当然ながら他にもPitckforkなどの超主要メデイア計200件ほどにプレスリリースを作って送りましたが、こちらはリアクションが無かったです。レーベル経由、プロモーション会社経由でないと受け付けないというメディアもありましたし、このやり方はまだ突破口が見えませんが色々と手法を変えて継続していこうと思っています。

あとアーティスト別のオンラインの影響力やプラットフォームごとのデモグラフィックなど、あらゆる指標をみることができるサービスとして

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があります。ここはプレミアムに登録すると月額$140と少し高額ですが初回登録で無料期間がついてくるので、この間に色々と調べまくって現状世界のリアルな音楽事情がどうなっているのかを数値で把握してみるのもいいかもしれません。現実的な使い方としては自分と音楽性が似ていてロールモデルとしたいアーティストを検索してみてどのプラットフォームで大きくオーディエンスを獲得できているか把握したり、どの国や都市での影響力が大きいかを調べて自分がリソースを投下する際の参考にしたりといったところです。とにかくありとあらゆる膨大なデータが数値化されているので他にもアイデア次第では画期的なプロモーション方法を確立できるかも知れません。

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色々と試してみましたが肝心のSpotifyの再生数は数千程度でまだまだ停滞しています。これらの活動で少しづつネット上のプレゼンスを上げていくことが全てSpotifyのアルゴリズムに影響していると公式にアナウンスされているので当然おろそかにはできないのですが、どこかでSpotifyのエディトリアルプレイリストに取り上げられたり、主要なメディアにピックアップされたりなどして多くのオーディエンスに聴かれるようなターニングポイントがあって初めて次のフェーズに移れるのかも知れません。ただし上述のBurstimoの動画で何度も説明されているのですがInstagramやSpotifyのアルゴリズムは、それを正しいやり方でコンテンツをアップして刺激し続けていれば一定の数値を超えた時に必ず露出が増えるモードに変わるのでそれまでは暗闇の中をひたすらトンネルを掘り続けるように耐えていくしかありません。また自分に関してはまだリリースの総量も少なすぎるのでとにかくいい曲をどんどんリリースしていくことが必要ですね。

今回はなんか音楽とは全く関係ないことばかりを書きましたが、InstagramやTikTokを見ればどんなアーティストも今や独自に音楽とは関係ないコンテンツをバンバンアップしています。特にTikTokではJason DeruloThe Chainsmokersなどがちょっとした小芝居をするジョークの動画を頻繁にアップしていたりしていて驚きます。従来型のパッケージ販売やマスメディア中心のプロモーションが完全に過去のものになっていることを痛感します。

さてDugoに関してはとりあえずいまは次回のリリースに向けて鋭意製作中です。近いうちにまたここでリリースのお知らせをすることになると思いますので是非ともご期待下さいませ。

どうやってSpotifyを攻略していくべきなのか。


Dugo "Recluse (edit mix)"のフルサイズミュージックビデオを公開しました。ここのところDugoの新作EP関連で色々と書いて来ましたが、ようやく明日10/9リリースとなります。以下はトラックリストとSpotifyのリンクになります。

Recluse EP
/ Dugo

さて、今回は初めてセルフリリースという形を取り、制作からディストリビューションの手配、マーケティングから広報までをすべて自分ひとりでやってみてどこまで成果をだせるのかというチャレンジでした。実は今年初頭には以前契約したドイツの音楽出版社からの紹介でロンドンを拠点とするエレクトロニック・ミュージックの老舗レーベルとリリースに向けての話し合いに入っていました。ですが最早音楽の中身だけで無名のアジア人の作品を取り上げるというのが難しいのは当然な上に、今まで自分自身でDugoのファンベースを育てる努力をないがしろにしてきたこともあり、遅々としてなかなか具体的な話が進まないままにCOVIT-19で全ての状況が変わってしまいました。

件の音楽出版社からも常々言われていたことですが、今はどんなレーベルやレコード会社もまずはSpotifyの数字を見てからでないと音を聴こうともしません。ですが色々とSpotifyをハックするためのTipsやソーシャルメディアadsの上手いまわしかたを調べていくと、オンライン上での活動や露出、存在感は全てSpotifyのアルゴリズムに反映されるようになりつつあることがわかり、ソーシャルメディアとのプラットフォーム間でのデータの連携すら行われているようです。ですのでいまライブはまだ難しい状況ではありますが、それ以外の活動に関しては以前と変わらず続けていけばファンベースを拡大してSpotifyの数字に繋げていくことは不可能ではありません。

オンライン上で存在感を増していくには楽曲以外にも活動自体に共感してもらえるような大小様々なコンテンツを提供していきオーディエンスとのエンゲージメントを増やしていく必要があります。それと自らの音楽活動の日常を見せることを通してゴールまでの長い道のりを共有してもらうことで楽曲や音楽性の深い部分にまで共感してもらえるという側面もあります。

自分の様な人間のあまりにも地味すぎる日常などに果たして共感などしてもらえるのだろうかとも思ったのですが、無名なアーティストには無名なりの見せ方や自分だけが見せることができるコンテンツがあるはずので、メジャーなアーティストの発信の仕方などは過度には参考にせず自分自身に向き合った方がいいと思います。自分の場合では今更ながら映像制作をはじめてみたり、その素材撮影のために色々な場所にでかけて行った時の様子をお見せしてみたりというのもそのひとつの手段です。

また昨今はそういった音楽ストリーミングのプラットフォームで存在感を維持するために驚くほど短いサイクルで"そこそこ"の作品を出し続ける戦略が主流になってきていますが、そこだけは自分は"そこそこ"でなくじっくりとアイデアを煮詰めて凝縮した作品を出していきたいと考えています。自分にとってDugoの楽曲は我が子の様なものなので"ちぎっては捨て"るようにひらめきでポンポン作れるものではないんです。ですので長い時間と労力をかけて厳しく鍛えて出来上がった楽曲は、世に送り出す際には目いっぱい手をかけて色んな方々に喜ばれて聴いてもらえるようにしてあげたいというのが親心ですw

というわけでひとまず初めてのセルフリリースが完了ということで一区切りになりますが、引き続きDugoは定期的にリリースしていきますのでご期待いただけると大変光栄に思います。次回はまた違った音楽スタイルやマーケティング戦略にもトライしてみようと画策しています。

By the way, this time it was the first time for me to release my work by myself, and the challenge was how well I could achieve results by doing everything from production, distribution arrangements, marketing strategy to publication on my own.

In fact, earlier this year, the German music publisher that I had previously signed referred me to some long-established London-based electronic music label, then actually I was in talks with them about the releasing. However, it is no wonder that it is difficult for them to take up an unknown Asian artist like me only by the content of the music, and moreover I have neglected the effort to grow Dugo's fan base until now. As a result, all the situations have changed with COVIT-19 before we talk actual things.

As I had always been told from the music publisher, nowadays no label or record company will listen to a song of the artists who haven't acquired some amount of figures on Spotify.

However, as I researched various tips on how to hack Spotify and how to use social media ads, online activities, exposure, and presence are all being reflected in Spotify's algorithms. It turns out that data is even being linked between platforms of social media and Spotify. So while live performances are still difficult, it's not impossible to expand the fan base and connect it to the numbers of play on Spotify if we continue to do other activities as before.

In order to increase presence online, it is necessary to increase engagement with the audience by providing various types of content that people can be interested in. Also, the audience can be sympathized with you even in the deep part of the music and musicality by showing the daily life of your own musical activities and sharing the long way journey as an artist.

I wonder if the audience really can be sympathized with the everyday life of such an ordinary person like me, but even unknown artists definitely have content that can be shown only by themselves, so it is better to face yourself, not to refer to the way of major artists overly.  For me that was to start making a video, or to show how it was like when I visited various places to shoot the material for the video.

Also, in recent years, in order to maintain its presence on such music streaming platforms, the strategy of continuing to produce "moderate" works in a surprisingly short cycle have become mainstream, but I would like to carefully develop ideas and produce a dense work.

For me, Dugo's tracks are like my own child, so it's not easy to make them. Therefore, I would like to make sure that various people will be pleased with the songs that have been grown over a long period of time and effort when they are released to the world. It might be like a parental feeling toward a child.

Anyway, now I've completed the first self-releasing, but Dugo will continue to release the works regularly, so I'm very glad if you would support me as well. Next time, I'm planning to try different music styles and marketing strategies.

ミュージックビデオを安く簡単に作るには?


今回は"Recluse" EPのTrailer#3の紹介とともにどうやってこのミュージックビデオを作っているかについて書いていこうと思います。

昨今では音楽を消費するメディアはCDはおろか最早ダウンロードサービスですらなくSpotifyなどのストリーミングサービスや動画メディアがほとんどになっているわけです。その中でもYouTubeやInstagramでコンテンツが消費されている割合は圧倒的に大きく、もし自分の様な無名アーティストが何かしらのきっかけで多くの人にその存在を知ってもらおうとしたらこれを無視することは到底できません。それと同時にこの場でどう存在感を作れるかが唯一のチャンスでもあるわけです。

ストリーミングサービスではサービス内にアカウントを持っていなくてはそもそも楽曲のページにたどり着けないというわずかな煩わしさが存在するため、アカウントが無くてもリンクからすぐに誰でも曲にたどり着けるという意味でYouTubeに楽曲をアップロードしておくというのはアウェアネスを高めるために極めて初歩的かつ重要です。
また広告のコンバージョンレイトに関して各種ソーシャルメディアが占める割合を見るとザックリとではありますが直近の指標ではInstagramが60%と圧倒的に大きいものがあり次いでFacebook、Twitterなどとなっています。

そんなわけで長年億劫で手つかずだった動画制作に着手してみようと思いたちました。ミュージックビデオの方向性やクォリティは最近は本当に様々あり自分と同じ様な極小規模で活動している様なアーティストでも何らかの動画を制作しているケースがほとんどです。にもかかわらずかなり有名なエレクトロニック・ミュージック系のアーティストでもMVはフッテージのつなぎ合わせ、もしくはエフェクト映像を音に貼っただけの様なものでよしとしているケースもあるので、注力してそれなりにちゃんとしたものを作れば抜きん出るためのきっかけにもなり得そうです。

ここからは自分が動画制作に使っているツールを紹介していきます。

Insta360 ONE X

自分で動画素材を撮りためていくのにまずはこのカメラが圧倒的に役立っています。これは撮影ポイントを中心に360度、周りの風景全てを撮影できるカメラなのですが、撮影されたムービーファイルを専用のソフトに読み込むとどの方向に視点を向けるかを指定できるので、その視点を動かすだけでも動きのある映像として落とし込むことができるんです。例えばこのTrailer#3の最後の部分で自分が写っている場面では下から上空と一緒に自分を写しているだけなのですが、後処理で視点を動かすことによって回転して見えるように2Dのムービーに落とし込んでいます。このカメラではまだまだ工夫次第によって色んな面白い映像が撮れる可能性がありそうです。専用アプリ内にはソーシャルメディア機能がついていて面白い動画をアップし合うコミュニティの様なものも形成されています。またInstagramのInsta360アカウントにもそれらからさらにキュレートされた独創的な映像がアップされていてここは特に自分も参考にしています。

iMovie
今回最初に制作した2つのトレーラーはInsta360で撮影した素材を使ってiMovieで簡単に編集しているだけです。動画制作ソフトに手を出すことへの億劫さからどうしても逃れられず、どうにか一番操作が簡単なこのソフトから入ってみた次第です。細かい色味の調整や複雑なレイヤーを使うのでなければiMovieだけでも充分だと思います

DaVinci Resolve 16
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今回のTrailer#3からはもう少し微調整ができる編集ソフトを使ってみたいと思い、このソフトを使い始めています。このDaVinci ResolveはAdobe Premire ProやApple Final Cut Proなどと比べるとまだ知名度は低いですがそれもそのはずで十年ほど前はスタンドアローン機として3000万円ほどで販売されていたものなんです。それが数年まえからLite版は無料で使えることになり、しかも使用できる機能の9割近くは有料版(4万円ほど)と同じという素晴らしい仕様になっています。色味の微調整に関しては自分はこだわりを持ってやっていきたいと考えているので、やはりこのソフトから入っていくのが得策だろうと思った次第です。何より無料ですしね。かつては億劫でなかなか始められなかった動画制作もいまや多くのYouTubeのチュートリアル動画のおかげで特にストレスなくはじめられました。音楽制作に比べると動画制作のチュートリアルは日本語で解説されているものが多いようです。

FreshLUTs
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実際に制作を始めると映像のカラーグレーディングが動画制作の楽しいポイントでInstagramのフィルターや音楽制作のプラグインと同様に最初は動画用の色味加工のフィルターが欲しくなります。このFreshLUTsはカラーコレクション用のLUT(look up table)と呼ばれるファイルを共有するサービスで、ここも無料でダウンロードして使うことができます。

Artgrid
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ここはフッテージのサブスクリプションサービスで高品質かつ高画質の映像が最低月額20ドル程度でダウンロードし放題で使えます。他のフッテージサービスではまだ個別映像ごとの販売のところが多く、しかも4K映像だとひとつだけの購入で数百ドルかかるようなところもあります。YouTubeやInstagramにアップするためのMV用の用途としてなら、ここのサービスで充分かつ最適かと思います。自分の場合は今後も短いものから長いものまで様々なMVを作っていこうと考えているので年間で300ドル程度のサブスクリプションフィーはとても割安に思えます。あとこのサイト内では動画を検索する時にテーマごとに探せたり、関連する動画を薦めてくれたりと、複数の動画を繋いでストーリーを作っていくための提案までしてくれるのがとても便利です。まだ比較的新しいサービスなのでフッテージの総量は少なめですが、今後増えていけばますます便利なサービスに発展していくと思います。

Artgridの登録先リンクを貼っておきます。このリンクから登録すると2ヶ月分が無料になるとのことです。


Fiverr
最後にこちらはクラウドソーシングサービスのサイトです。この中には様々なクリエイターが登録していて、動画編集の依頼はもちろんMV制作そのものを発注することもできるうえに、中にはフッテージ編集の簡単な作業だけでよいならわずか数十ドルでMVを作ることも可能です。自分はいまのところ外部発注することは考えていませんが、今後動画制作にハマってきたら単純作業の部分だけをアウトソーシングするのは便利で効率的かもしれません。ちなみにFiverrには音楽制作のクリエイターも多数登録していて、作曲編曲、作詞、ミックス、マスタリングなどありとあらゆる音楽制作の行程に関する作業をアウトソーシングすることもできます。

と、まあこんな感じでついに動画制作に手を出してしまいましたがどうなることやら(^_^;) 制作のプロセスやオンライン上に存在するサービスの質や仕組みなどはほとんど音楽制作のそれと変わらないのでいまのところスムーズに習得できているように思えます。

それと今後は音楽単体だけでのコンテンツとしての訴求力ではなかなか抜きん出るのは難しく、ますます総合的なコンテンツ力と発信力が問われるようになってくると思います。これまで自分が何気なく音楽を聴くことだけで楽しんできたエレクトロニック・ミュージック系のアーティストでも、一旦マーケティング、アウェアネス的な戦略の視点でウォッチしてみると、それがかなり有名なアーティストであっても実に色んな形、色んなプラットフォームでコンテンツ制作やサービスを展開していて、自らのブランドを確立するための活動に相当なリソースを割いていることが見えてきます。ですので自分もこのサイトに来ていただいた方に少しでもお役に立てそうな情報があればできるだけ発信していこうと思います。


Here is the "Recluse" Pre-Save link on Spotify
最後にこちらはRecluseをSpotify上で事前にセーブすることができるリンクになっています。クリックしていただけたら大変うれしいです。
よろしくお願い致します。(^_^;)

"Recluse" EP Trailer #2と今後の活動についてのご報告


"Recluse" EP Trailer #2 by Dugo
Dugo is going to be releasing an EP with 4 new tracks, called "Recluse"on October 9th

Here is the "Recluse" Pre-Save link on Spotify
こちらはRecluseをSpotify上で事前にセーブすることができるリンクになっています。クリックしていただけたら大変うれしいです。よろしくお願い致します。


前回のNewsでお知らせした通りDugoの新作EP"Recluse"のリリースに向けて着々と準備を進めています。2017年のアルバムLingua Franca以降なかなか制作が軌道に乗らず活動が滞りがちだったのですが、今年の4月に自らがCOVID-19に感染したと思われ(断定しないのはPCR検査、抗体検査などを受けていないからですが、感染された方のブログや動画、海外の論文などで発表された詳細な情報による症状の推移、期間などがまさに自分のそれと当てはまっていました。)今後は自分の音楽活動で最もフォーカスしていきたい部分にもっと注力していかないといつか後悔するだろうと痛感したことが再開のきっかけになりました。

またCOVID絡みで言えば、今多くのアーティストがコンサート活動ができずにいるなか今後はコンテンツ制作力の価値が上がり、その需要も高まるだろうという傾向はある意味チャンスにもなり得るだろうと考えたことがもう一つの理由です。今回の"Recluse"EPに関しては全体としてはここ2年ほどの間に作り続けていた楽曲群のまとめですが、かなりの部分は自分の体調が回復した5月以降に作業したものになっています。EPという形をとったのは昨今のストリーミングサービスの趨勢においては、もはや10曲15曲がまとまって完成した後にアルバムとしてまとめてリリースするよりも数曲単位で頻繁にリリースしていくスタイルが主流になっているからです。CDなどのフィジカルでのリリースを考えなければなおさら合理的です。というわけでDugoも今後はコンスタントにEPやシングルのリリースをしていき、それらの集大成としてのアルバムリリースという形をメインの活動にしていこうと考えています。

そんなこともあってコンテンツ制作力の拡充という意味でRecluseのリリースに関しては初めてミュージックビデオの制作にも手を出しています。大規模な予算を組んで大掛かりなMVを作ることなどは当然できないのですが、まずは地道に自ら撮影した素材を自分で編集していく前提で先月8月から都内の色々な場所に出かけて普段趣味にしているジョギングを兼ねて走りながら素材を撮りためていき、いまのところリリース告知用に2本のトレーラーを作ってアップしました。こちらの活動においてもCOVIDの影響があり、どこに出向いても人出が少ないせいで撮影がしやすく、なかなかおもしろい風景が撮れています。

砂粒の様な個人での活動で何の後ろ盾もアーティストしての実績もない自分の様な人間でも昨今はDIYで全ての音楽制作を完結し、ミュージックビデオを作り、果ては昨今のインターネットサービスを駆使すればレーベル運営、マーケティング戦略と、それらを学ぶためのツールすらも10年前の数千分の一、もしくはフリーで運用することができる時代になりました。特にマーケティング戦略の作り方に関しては最近徹底的に研究していて、新しい情報を得るごとに目から鱗が落ちるような驚きを感じているので、今後もしその成果がでたらこちらもまとめてブログで報告してみようと考えています。

High Score 2019のKeynoteファイルとYouTube動画

メルボルンのゲームオーディオイベント High Score 2019で行った講演の際につかったKeynoteファイルをアップロードしましたので興味のある方はダウンロードしてご覧になってみて下さい。英語のプレゼンターノート(アンチョコ)も残してあります。

I have uploaded the Keynote file used during the lecture at the game audio event High Score 2019 in Melbourne, so if you are interested, please download it and have a look. I also left an English presenter note.

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当日の様子をまとめた動画もアップされています。

モニタリング環境をアップデート。Updated monitoring environment(2019/09/04 追記)

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Dugoのアルバム制作が遅れながらもようやく終盤にさしかかってきたので、ここでより正確なミックスチェックの環境を作ってみたいと思いメインのモニタースピーカーとして新たにBarefoot Sound Micromain 27を、サブとしてKSdigital C5-Coaxを導入してみました。自分でミックスまでやって完結するプロジェクトの場合にいつも悩みになっていたのが低音の処理でした。散々綿密にチェックしたつもりでもマスタリングスタジオにいって確認すると自宅スタジオでは見つけられなかった低音のピークがわかったりすることがあったからです。ラージモニターでないと把握できないような低音域の状況を、ミッドフィールドクラスなのにもかかわらずこのBarefootのスピーカーではかなり正確にチェックできます。しかもかなり小さな音量で聴いても帯域のバランスが変わらないので作業スペースの防音や吸音をさほど気にしなくても十分その機能の恩恵が受けられるのが素晴らしいです。

新しいモニター環境になったので慣れるために色々な曲をリファレンスで聴いてみましたが、今までに何百回ときいてきたような曲でも全く異なる印象に変わるものもありました。うまく説明できないんですが一般的なモニタースピーカーの上位互換として機能するチェックマシンの様な感じです。本質的にバランスの良いミックスのものは以前と同じ様に聴けるんですが、突出した部分があったりバランスのおかしいものに関してはそれまでは気が付かなかった問題点をハッキリと提示してくれます。それと30hz近辺の帯域で何が起こっているのかは一般的なニアフィールドのモニターではほとんど確認できてないんだなということが良くわかりました。

また色々な曲をリファレンスで聴いているとその辺りの超低域でミックスの工夫を凝らしている曲は全体としても素晴らしいミックスになっている曲がとても多いです。特に最近気に入っているAdele「25」とJustin Bieber「Purpose」 は音の全体像の作り方のアイデアとテクニックの素晴らしさを確認でき、あらためて得られるものが多々ありました。この2枚はまさに「2016年の最新の音」と言うにふさわしい驚異的な作品だと思います。(リリースされたのは去年でしたっけ?)

また今回DAコンバータのLavry DA11からのケーブルもいくつか試してみた後に今まで使用していたBelden 8412から今回はGotham GAC-4/1にしてみました。これまではさほど気になっていなかったケーブルごとの音質の差も今はかなりはっきりとわかってしまいます。様々な楽曲をリファレンスする際に8412ではかなり下の帯域で突然持ち上がるピークがあってそこだけが分離したように聞こえてしまうということがありました。以前にギターのケーブルで試した際にもこの感じが肌にあわずに止めたことがあります。Gothamケーブルだとローミッドからサブベースまでが素直に繋がっているように聞こえます。

KSdigitalの方は迷った時の確認用のサブとしての用途です。長いこと同軸のTannoy Precisionををメインにしてきたので、同軸のニアフィールドで比較的新しい製品の中からこれを選んでみました。こちらもスピーカーのサイズの割にはかなりワイドレンジで奥行きもよく見えます。Barefootで大きな全体像を確認してKSDigitalでもっと近寄った状況での音像を確認する感じです。ただこちらはなぜか電源を入れてからしばらくは低音の出方が暴れて落ち着かないのでちょっとまだ戸惑っていますw まだまだどちらとも設置の仕方から試行錯誤中ですが今のところとてもいい感触がつかめています

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スピーカー両サイドにサブウーファーがあり、全部で5ドライブユニットという個性的なコンセプトです

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スピーカー口径5インチながらかなりワイドレンジです。

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両機種とも国内電圧向けのローカライズがされていないので117vに変換するステップアップトランスのCSE ST-500もついでに組み込んでみました。


Barefoot Sound's Masters Of The Craft

2019/09/04 追記
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先日、サブのモニタースピーカーをNeumann KH 80 DSPに変えました。KS Digitalの高域のクリアさと解像度は気に入っていたのですがローだけが分離した様な聞こえ方になってリファレンスとしては迷ってしまうケースがあったためです。

Neumann KH 80 DSPは専用のiPadアプリNeumann Controlからネットワーク経由でスピーカーの設定を細かくコンフィギュレーションできるのが最大ので利点です。また実際に使用してみると周波数帯域ごとのクロスオーバーがとてもスムースに繋がっているためモニターとしてとてもニュートラルなリファレンスができます。メインモニターのBarefootと比べてみると明らかにローミッド(ちょうどベースの音域の中でモワモワしやすい帯域)が認識しやすいです。というか、もしかしたらBarefootは超低域のモニタリングを圧倒的な精度でできる反面、そこより少し上の帯域が沈んでる様にも聞こえることに気が付きました。

やはりモニタースピーカーというものはただハイエンドのものを一択で使えばいいというものではなく異なる評価基準のもとに色々使うことが必要だとあらためて思いました。

The other day, I changed the sub monitor speaker to Neumann KH 80 DSP. I liked the clearness and resolution of KS Digital's high frequencies, but there was a case where only the low sound was heard separated and the reference was lost. The advantage of the Neumann KH 80 DSP is that you can finely configure the speaker settings via the network from the dedicated iPad app Neumann Control. Also, when actually used, the crossover for each frequency band is connected very smoothly, so you can make a very neutral reference as a monitor. Compared with Barefoot as the main monitor, it is clear that the low mid (the band that is easy to mow in the bass range) is easy to recognize. On the other hand, Barefoot can do super-low frequency monitoring with overwhelming accuracy, but I noticed that it sounds like the band above it is sinking. After all, I thought again that monitor speakers are not just high-end ones, but they need to be used under different evaluation standards.

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このNeumann KH 80 DSPですが、コストパフォマンスを考えたら圧倒的に買いです。音量を絞っていっても全体の音像の形が変わらないので、自分の場合は同様の聞き方ができるメインモニターのBarefootと併用しやすいですし、Barefootは奥行きが見えすぎる上に音像のエリアが広すぎるのに対して、もっと近くて小さい音像で聞きたい時にKH80は大変重宝しています。

それと高域から低域までのバランスがとても良いので今のところは周波数に関するサージカルな使い方のときはNeumann。シビアな定位と奥行きの判断はBarefootという使い分けにしています。前述のNeumann Controlに関しては今年中に専用の環境測定マイクキットがNeumannから発売されるとのことなので増々モニタリングの精度があがるのではないかと期待しています。

This Neumann KH 80 DSP is overwhelming if you consider cost performance. Even if the volume is turned down, the shape of the entire sound image does not change, so it is easy to use it together with Barefoot, which can listen in the same way. The KH80 is very useful when you want to hear a closer and smaller sound image. The balance from the high range to the low range is very good, so for now it's Neumann when using surgically about frequency. Judgment and depth of severe localization are used properly as Barefoot. With regard to the Neumann Control, a special environmental measurement microphone kit will be released by Neumann later this year, so we expect that the accuracy of monitoring will increase further.

ベルリン郊外のクロイツベルクのスタジオでの検証動画。クリエイターが複数で共同で活用してるスタジオのようです。クロイツベルクは東京でいうと中目黒、吉祥寺みたいな場所ですね。中規模のクラブやギャラリーなども多いエリアでNative Instruments本社もここにあります。

Verification video in a studio in Kreuzberg, Berlin. It seems to be a studio that creators use together. Kreuzberg is a place like Nakameguro or Kichijoji in Tokyo. There are many medium-sized clubs and galleries, and the Native Instruments headquarters is nearby.

こちらはNeumann Controlを使ってのコンフィギュレーションの説明動画ですが、他のモニタースピーカーを使ってるひとでもこの動画は必見です。自分も実際にやってみましたが、今までのスピーカーの設置に関しての自分の認識の甘さを痛感しました。LRの両スピーカーとリスナーの距離が正三角形になるようにすること、正確な角度、スピーカーから部屋の壁までの距離など、細かい要素をシビアに追い込んでいくことによって劇的にモリタリング精度が改善することを実感しました。

This video is for explaining the configuration using Neumann Control, but this video is a must-see for anyone using other monitor speakers, too. I actually tried it, but I realized a lack of my understanding about the importance of the way of installation of the speakers so far. The accuracy of the mortaring is dramatically improved by making the LR speakers and listeners have a regular triangle distance, precise angles, and the appropriate distance from the speakers to the room walls.

Ecovanavoceとのコラボレーション

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Dugo / Lingua Francaではイタリアの古楽器奏者アーティストEcovanavoceとも2曲コラボレートしています。彼らとの共同制作は以前にもブログで紹介したことがありますが。今回のDugoのアルバムに収録されたのはそのうちの1曲と、もう1曲はDugoの旧曲を彼らとリアレンジして新しい曲として再構築したものです。

Ecovanavoceというのはいわゆる回文の造語で、彼らいわく古代と現代、西洋と東洋など全く異なる文化の接点になるような音楽性を模索していくプロジェクトだとのことです。ゆえに今では現存しないイタリア及び地中海周辺の古楽器をリイシューし、コンセプトはそのままに現代の楽器として生まれ変わらせ、音楽スタイルも伝統的なスタイルを踏襲しつつ現代的なサウンドアプローチで再現することを目的としています。モダンな音楽を志向する日本人でありながらも欧州の伝統的な音楽への強い興味を持つ自分とは実に波長が合う関係で、彼らにしてみたらまさに自分は彼らの足りないピースにピタッとはまる存在だったのかも知れません。彼らとはLingua Francaの完成後も地道に共同制作を続けており、今年はその成果がイタリアのかなりメジャーなフィールドで形にできるという勝負どころの段階になってきています。彼らとの最初の接点はSoundcouldでしたが、そんなネット上のただの偶然によって生まれた関係性が後々にお互いのキャリアに大きく影響していく時代なんですね。




Sol Ponienteのコラボレイター

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ソロアルバム、Dugo / Lingua Francaは数人のアーティストとのコラボレート、というより彼らがある意味、自分の尻を押してくれたことによって結実した作品なんです。Sol Ponienteという曲でテーマのヴァイオリンを弾いてくれたMonicaは、元はと言えばLanguage Exchangeのウェブサイトから自分のプロフィールに興味をもって連絡してきてくれたという僕の英語の先生ですw まず最初に彼女が言ったのは「あなたがハイレベルな英語学習をしたいのなら、どんな英語教師よりも私が最適よ。なぜなら私は幼児の時からのbibliophage(読書狂)だから」ということでしたw また家族兄弟のうち7人がミュージシャンという彼女は2歳からヴァイオリンを始め現在はオーケストラ、チェンバーアンサンブルからジャズまで、カナダとアメリカを中心に幅広く活動をしています。

彼女は自分への英語のレッスンでは、例えばまず全く違うジャンルの好きな曲を5曲あげさせてそのどこが好きなのかを説明させ、かつその5曲に共通する要素をあげて説明させるという様な、なかなか自分のレベルでは難しい出題形式で訓練してくれました。ですがSkypeを通じて互いに呑みながらの雑談ではお互いの学生時代のバカ話などで盛り上がり、そのうち自然に一緒に1曲作ろうということになったのでした。彼女の人物像に対して持っている自分のイメージをテーマのメロディで具現化した曲、それがSol Ponienteという曲です。これはスペイン語ですが、英語だとSetting Sun、日本語だと「暮れゆく太陽」という意味です。

Dugo @AMPcafe Tokyo 09.05.2015