Takahiro Izutani

Rock In Opposition Japan 二日目

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前回の続きでRock In Opposition Japanの二日目のレポートです。

Aranis
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全員アコースティックの室内楽の編成で変拍子の暗く不穏な曲を演奏するバンドです。ロックのテイストはほとんどないですが、プログレのテイストはものすごく強かったです。あとメンバーの女性率が高く、またルックスも良く、さらには今回のフェスでバンドの平均年齢も一番若かったのではないでしょうか。個人的に気になったのはHappy Familyが以前カバーしてCuneiform Recordsのオムニバスアルバムに提供したDeniel Denis氏の楽曲「 Bulgarian Flying Spirit Dances」を彼らがカバー演奏していたことです。僕らのはもろにロックのアプローチだったんですが、本来の室内楽編成のアレンジでのライブが見られたのはとても良かったです。

Happy Family
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いよいよ自分たちの出番。ここまでオーディエンスとして見てきて少し自分たちが場違いのロック野郎どもということがわかってしまったので少しナーバス気味でしたが、まあ始まってしまえばなんとかなるもので、いつもながらのザックリとした演奏でフェスに彩りをそえられたんではなかろうかと思います。

SOLA Lars Hollmer's Global Home Project
このSOLAさんだけ自分たちの演奏後にバタバタしてしまって全く見られませんでした!

Mats/Morgan Band
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このバンドも本当に楽しみにしていました。ドラムのMorgan Agrenさんと鍵盤のMats Obergさんは少年時代からずっと共に演奏してきたコンビで、サポートミュージシャンとして鍵盤とギター担当のStefan Järnståhlさんと、さらにはベーシストは元MeshuggahのGustaf Hielmさんでした。彼らの最新アルバムSchack Tatíは完璧にタイトな演奏をコンピュータ内でエディットや加工を加えてさらに高次元のオリジナルな音楽に昇華させたものなので、これがライブでどうなるのかとても楽しみでしたが、ほとんど原曲のイメージのまま超人的なテクニックの演奏で魅せるタイプの演出だったので期待を超える部分と期待はずれの部分が半々という感じでした。とはいうもののあり得ないほどの難易度の高い楽曲を全くそうとは感じさせずに彼らの世界観に引き込む演奏は本当に素晴らしかったです。鍵盤のMatsさんは恐らく全盲なのだと思われますが、楽屋でも常にMorganさんが手を引いてあげてサポートしていました。本当に仲の良い幼なじみなんでしょう。そういうところから始まってこの奇跡的なサウンドが完成しているのかと思うとまた感慨もひとしおでした。

Present
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おそらくこの日のオーディエンスの大半はこのバンドのライブを見たさに来られた方だったのではないでしょうか。このPresentも70年代から活動している伝説的なカリスマRoger Trigaux (ロジェ・トリゴー)を中心に活動を続けているグループです。先述のAranisにも影響を与えているという本当に独特の音楽性でした。以前、というかもう10年以上前に当時大変お世話になっていたとあるプログレマニアの方と「真のプログレとはなんぞや?」という話になった時に、「暗く、重く、冷たく、そして長い!」のが定義であり、それを象徴するのが後期King CrimsonとPresentだ!という含蓄のある言葉をいただいたことがあり、今もなおその言葉が深く胸に刻まれています。この日はそんなPresentと対バンでライブを生で見ることができるという貴重な機会でした。ロジェさんは足を悪くされているのかずっと車椅子での移動で、楽屋でもずっとケータリングのところにとどまって穏やかな表情で出番までずっとタバコを吸われていました。
そして演奏中は鍵盤を弾かれていましたが、具体的なアンサンブルに貢献するというよりもステージにいることでライブ全体の気をコントロールするというような役割に近かったと思います。Presentのライブはまさに「暗く、重く、冷たく、そして長い!」というものであり、普段は長く冗長な音楽にすぐ飽きてしまう自分がなぜかPresentのライブでは、ロジェさんの気に引き込まれる様にその重苦しい空気に魅了されてしまいました。これこそがライブのマジックなんだと思います。他のお客さんを見てもみんなこの重苦しい演奏にノリノリでした。プログレに疎い自分からするとGodspeed You! Black Emperorにちょっと近いんではないかと思いました。
終演後は会場は大喝采でスタンディングオベーション。二日間色々な個性的なアーティストが出演しましたが、Presentの音楽は不思議と他のどのアーティストの音楽性をも内包し、それでいてどれとも類似性がないという様な本当に稀有なオリジナリティだったと思います。

ところで、初日にはフランスで毎年開催されている本家のRock In Oppositionに来年は我々Happy Familyが参加することがオーガナイザーのMichel Bessetさんからアナウンスされました。来年に向けてまたひとつ大きな楽しみができました。
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