Takahiro Izutani

2014年6月

Sonar 2014 by Night

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前回に続き今度はSonar by Nightについて。by Nightの方は夜10時からのスタートで比較的大物系のアーティストのライブから始まり、その後朝までDJがメインのクラブの時間帯になります。会場のバカでかさはby Day以上で会場内の一番大きなベニューだとステージから最後尾まで1kmほどもありました。ざっと調べたら幕張メッセの倍くらいですかね。にも関わらず自分が会場に入った11時ころでもう相当な人で埋まっていました。

ここ数年でヨーロッパのクラブによく行っていますが、どこもものすごくエントランスのセキュリティチェックが厳重で驚きます。今回も三重のチェック体制になっていて、入り口には全部で30人くらいの警備員が立っていました。中にはこのひと元傭兵やマフィアの用心棒なんじゃないかってくらいのゴツいひともいます。普通に暮らしてたらまず見かけないだろうというくらいの風貌です。それとその甲斐あってかさらに毎回驚くのがクラブの中の安全な雰囲気です。みんな酒こそガンガン飲んでいますが、泥酔して吐いている輩はいませんし暴れたり喧嘩になっているような光景も全く見たことがありません。ちょっと休憩できるようなスペースに女の子が一人で大の字になって爆睡しててちょっと危ないなあと思って見てましたが、一時間後にまたそこに戻ってきてもまだガッツリ寝てましたw

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Downliners Sekt
どこかのレビューに「Basic Channelと初期Burialが邂逅を遂げたような深淵さ」と書いてあって、まさにその通りと思いましたが、要はブレイクビーツとダブとエレクトロニカのコンビネーションできかせる自分好みの超カッチョイイ音を作る人達です。まだ無名なようですがとても楽しみにしていました。スタジオ音源に比べると少しブレイクビーツの要素が強いライブでした。曲を構成する個々のサウンドが霞がかかったようにくぐもっているにも関わらず全体としてはとてもソリッドなミックスになっているのが実にうまいと思いました。こういう音作りってすごくセンスが問われるんです。

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Massive Attack
自分がこの手の音楽を聴きだすきっかけ、また自分でコンピュータを使って音楽を作る事のきっかけにもなったアーティストです。それから何年も経ち、ようやくライブを見ることができたので感慨もひとしお。と、思っていたのですがライブ自体の完成度は???という感じ。YouTubeなどでライブ映像を見ていたのである程度は予測できていたのですが、色んな意味でイマイチでした。前回のブログに書いたBonoboなどはスタジオレコーディングの素材を使っていかに有機的な演奏に昇華していくかという事に注力していたのですが、こちらは素材のトラックに生演奏をあてただけという印象でした。しかもあまり演奏が上手とはいえない上に、出音のバランスも良くないという。特に低音の出し方が異常なほどで、ベースやキックの音が特定の周波数になると地面全体が振動して足元からそれが伝わってビヨヨーンと下半身全部が震えるくらいでした。この低音が結構曲を台無しにしていて、名曲Unfinished Sympathyの本来メインで聴かせるべき美しいストリングスサウンドが全部この低音でかき消されてました。

昨今では「mp3をヘッドフォンで聴く」のが主流になり制作者もそのことを配慮して不必要な低音を極力排してミックスする事が多くなっていますが、今回のSonarを見てもライブやDJのサウンドでその傾向が強かったと思います。先述のBonoboはベースをハイフレット中心のメロディ楽器として使い、後で述べるWoodkidはベースレスの編成で(チューバ奏者がいますが)両者とも過剰な低音を排しながらも迫力はキープするオリジナルなバランスのサウンドを作っていました。少し不快とも思えるくらいの低音を足元に感じながら、ついにMassive Attackも時代遅れになってしまったのかなとふと感じてしまいました。

しかしながらバックに流れる映像はとてもセンスがよく、色々なものの数値や文字、企業のロゴなどを次々に映していきながらその流れで政治的社会的なメッセージを表すようなものでした。もしかしたらライブの音作りよりももはやほとんどの興味が映像の方に向いているのかもしれないと思いました。

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Woodkid
全く前情報がなく、アーティストの名前すら知らなかったのですが、偶然ライブ開始時にステージ近くに居合わせたことでフルでライブ体験ができました。映画Inceptionの音楽の様な不穏なブラスサウンドのイントロが始まると、それまで人もまばらだったステージ周辺に急激に人が押し寄せてきてライブがスタートしました。Woodkidの音楽は端的にいうと古き良き時代のヨーロッパの映画音楽(ニーノ・ロータ、ミシェル・ルグラン、ヘンリー・マンシーニとかの)の様な楽曲に強烈なオーケストラパーカッションを加えてダンスミュージック化したものといったところですw このライブがあまりにもかっこ良すぎて盛り上がりすぎて、これだけでもSonarを見に来てよかったとすら思えたほどでした。Woodkidの映像は特にメッセージ性はなくサウンドのイメージを具現化した様なものですが照明とのマッチングが素晴らしく独特な空間を演出していました。実際にどんな感じだったかは下に動画のリンクを張っておいたのでよろしければ見てみて下さい。モミクチャにされながら耐えて自分で撮った映像ですw

ライブが終わって照明が明るくなった時に隣で大騒ぎしていたゴッツイ砲丸投げの選手みたいなあんちゃんに何語か全くわからない言葉でまくし立てられて、なぜか最後はガッチリと握手して抱き合って、ライブの感動と興奮を分かち合いましたw あとで調べたところWoodkidはLana Del ReyやKaty PerryのMVも撮るフランス人映像作家 Yoann Lemoineによる初の音楽プロジェクトだそうです。片手間でこんなすごい音楽を作られたら本業のひとはたまらんです。日本の例で例えるとクドカンさんのグループ魂みたいなものでしょうか。あちらも片手間でやられたらバンドマンはやってられんってくらいのカッコ良さですが。


Woodkid Sonar Barcelona by Night 13 06 2014


Woodkid Sonar by Night Barcelona 13 06 2014 Ending

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むちゃくちゃ混み合っているフロア中を練り歩きながら背中にタンク背負ってビールを売ってるバイト君が沢山いました!
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Four TetのDJ。Massive Attackの前座的な役割だったのでダブばっかりプレイしてました。ある意味貴重かも?


Sonar 2014 by Day

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今年はバルセロナのSonar Festivalにいってきました。Sonarは毎年バルセロナで行われるエレクトロニック・ミュージックとメディアアートのお祭りです。by Dayとby Nightで二箇所の会場でおこなわれていました。by Dayといってもお昼からはじまり、終わるのは夜の10時です。スペインは夜がおとずれるのがほぼ10時ごろからととても遅いんです。

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Nils Frahm
アンビエントやエレクトロニカのテイストを取り入れた作品を多数リリースしているピアニストです。どんなライブになるのか楽しみにしてましたが、ピアノ二台とローズ、それと大きなエコーマシンなどを駆使しつつの壮絶な人力ミニマル・ミュージックの演奏でした。最後は一曲で20分以上もの長尺の曲で汗だっくだくになりながらの熱演で大歓声をあびてました。以前にBrandt Brauer Frickの一時間半ノンストップの人力テクノのライブをみましたが、クールなイメージのあるミニマル・ミュージックのアーティストが肉体を酷使してみせる演奏にはとても感動させられます。

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Trentemøller
このひとの作る硬質でダークな音が大好きなのですが、最近のライブでは歌もののロック寄りな音に傾倒しているようです。

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Matmos
アメリカ出身の実験的なエレクトロニカを作るアーティスト。BjorkのVespertineの頃のサウンドプロデューサー、ライブサポートメンバーとして有名な人たちです。この日のライブでは映像素材にかけるエフェクトに音を連動させたり、普通のメトロノームを走らせながら、その音に即興的な加工を加えたり、またその音をトリガーにして様々な電子音を発音させたりとかなり変わった趣向の演奏でした。「real experiment !」と観客に向かって強調してましたね。

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Bonobo
UK出身、アブストラクトヒップホップの名門レーベルNinja Tuneから数作リリースしてる中堅アーティスト。スタジオ音源からのイメージではもっとクールで抽象的なライブになるのかなと思っていたのですが、すごく躍動的でバラエティに富んだ熱いライブでした。BonoboことSimon Greenはシーケンスやエフェクトを操作したり、小さな鉄琴のような楽器やベースを演奏したりと大忙しです。また曲によってサポートメンバーが入れ替わり立ち代わりなので飽きません。女性ボーカルやホーンセクションが入ったかと思えばドラムとベースのみのセッション、Simon一人だけでDJっぽいライブ演奏など。どの組み合わせでもとても構成や展開が練られている上に演奏の安定感も抜群でした。特にサポートのドラマーの演奏が素晴らしく、いわゆる「打ち込み+生演奏」的なライブのイメージを完全に払拭するほどに有機的なライブでした。このアーティストはもっともっと人気がでてくるような気がします。アリーナコンサートなんかでも映えそうな風格でした。

by DayではアーティストのライブやDJの他にも最新音響テクノロジーやコンピュータソフト、メディアアートの展示会や、McIntoshのオーディオ機器だけで組んだクラブサウンドシステムの小屋も併設してたりと、(これは残念ながら行きそびれました)バカみたいに広い会場のどこにいっても飽きることがありません。

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二回とも見られなかったPlastikman。