Takahiro Izutani

2013年7月

金沢蓄音器館に行きました。

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先日、金沢蓄音器館に行ってきました。蓄音器540台、SPレコード2万枚を所有する音の歴史館です。蓄音機に関する知識は「エジソンが発明した人類初の録音機器」ということくらいしか無かったのですが、館長さんが説明しながらの試聴会や館員さんとの雑談を経て色々とおもしろい経緯を知ることができました。

試聴会では最初期のものから製造年代ごとに10台ほどを試聴させてもらったのですが、最初にエジソンの作ったものは今の円盤のレコード型ではなくて円筒状のメディアを回転させながら外周に刻まれた溝の深さの変化で縦に振動させて録音再生する方式だったんですね。確かにこの方式だと外部の振動による音の乱れは少ないし、円盤状のメディアの様に外周から内周に進むにつれて音質が劣化するという事もなく均等に録音できます。
しかしながら当然円筒状のレコードなどプレスで量産できる円盤状のものとは生産コストでは比較にならない上に原材料費もかさむので次第にシェアが少なくなり淘汰されてしまったそうです。ちょっと昔でいうとビデオテープのVHSとベータ、今だとiOSとAndroidの様な状況が19世紀後半にもすでに起こっていたとうことですね。ちなみに現在の円盤状で横振動方式のメディアを作ったベルリナーという人が立ち上げた会社がグラモフォンなんだそうです。
グラモフォン=ビクター=HMV(例の犬と蓄音機のマークにはHis Master's Voiceと書いてあります)
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この試聴会では最後にCDの音を現在の普通のスピーカーからと蓄音機のラッパからとを切り替えて再生する比較試聴がされました。美空ひばり「川の流れのように」をリファレンスとしていたのですが、ラッパで聴くとスピーカーよりも圧倒的にボーカルのレンジにスポットがあたって聴きやすくはなるんですが、現在のリミッティングされた音源をラッパから再生してもこれがなかなか抜けて来ないんですよね〜。蓄音機の電気で増幅されてない音が何で耳や心に直接ささってくるのか、色々と考えさせられました。
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エジソンのスタンダードモデル Cコンサート用中型ラッパ。
1901年(明治34年)
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米国コロンビア製のディクタフォン
簡易録音用口述筆記具。テープレコーダーが実用化されるまではこれだったそうです。
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右は英国EMG社のもので黒いラッパは電話帳を溶かして作っているそうです。左がビクター社のビクトローラ・クレデンザ。館員さんの話によると東京でもクレデンザの試聴会があるとパッと100人近くは集まるとのことです。