Takahiro Izutani

ベルリンのクラブ 1

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先日のブログで書いたガイド本を読んでから触発されてしまいベルリンのクラブ巡りをしてきました。特に行ってみたかったのが旧東ベルリンの変電所跡の建物をそのままクラブとして使っているという廃墟フェチの方などにはたまらないBerghainというクラブです。ここでの事は今まで行った事のあるクラブのイメージを全て塗り替えてしまうような体験でしたので順を追って書いてみようと思います。
まず基本的にこのクラブは土曜日しか営業していないのですが、月曜の午前中までぶっ続けで盛り上がり続けているのが普通だということです。巨大な五階建て(多分)の建物内にはゴッリゴリのミニマル・テクノを中心にプレイするメインフロアのBerghainとその上にあるハウスを中心にプレイするPanorama Barの二つのフロア構成で成り立っています。夜の1時頃ベルリン東側の中心部アレキサンダー・プラッツ駅から2つ目のオスト駅で降りるとあたりはほとんど店もなく寂しくだだっ広い通りがあるだけですが、まわりにはチラホラとBerghainに向かうであろう人達が見えます。5分程歩くとBerghainの巨大な建物が見え、内部のスモークや照明の色が見える事からすでに盛り上がり始めているのがうかがえます。と同時にまだ建物に着くまで200メートルのところですでに中に入場するのを待つ行列ができていました。このクラブは入り口でドアマンのチェックがあり、その日のパーティの雰囲気や店自体のイメージに合わないと判断された人間をシャットアウトするシステムなのです。この場所に人が並んでたまるのが常なようで行列の客相手にビールを売りに来る屋台まで来ていました。結局一時間半ほど待ってようやく列の先頭近辺まで来ました。前の方では同様に長時間待った人達がまるでプロレスラーかヘルスエンジェルスみたいなドアマンに容赦なくはじかれています。見ているとその判別基準は完全に主観で瞬時に決めている様に見えるのですが、バカ騒ぎしそうな子どもの団体や派手な服装のギャル二人組などが特にダメなようでした。で、ようやくドアマンの許可を得て中に入るとまずすぐに持ち物のチェック。これは空港でのセキュリティチェック並に入念にされました。というのはここはゲイクラブでもあるので普段の生活でカミングアウトしていない人達のプライバシーを守るためにカメラは絶対にNGだからなんだそうです。
ようやくチェックも終えて店内に入るとまず一階はほとんど真っ暗なラウンジが奥にありうっすらと男同士で何やらうごめいている様子がうかがえます。ちょっと怖いのでここはスルー。また鉄製の扉の中の倉庫のような真っ暗な場所に次々と屈強なスキンヘッズの男が入っていったきりでて来なかったりと色々と謎が多いです。 そこから階段を上がったところがメインフロアなのですが、鉄製の階段や周囲の金属壁に轟音が響いてまるで雷が鳴り続けてるような状態です。メインフロアは四方を巨大なスピーカーに囲まれていて天井はその上二階が吹き抜け、ただし二階といっても一階分の天井の高さが10m近くあるのでかなりの高さになっています。四方から爆音が鳴っているのにスピーカーの真ん前に立っていても耳が痛くなることはなく、下からの重低音とスピーカー上部からの音、それに天井に反響した音が上から降ってくる様な感じで全身が音に包まれるような感覚で踊れます。
ここのスピーカーはFunktion-Oneというメーカーの製品で、このスピーカーをうまく導入している事で名高いイビサ島のSpaceというクラブに行った事があるのですがSpaceよりもBerghainの方がさらに良い音を出してました。比較するとSpaceはさほど天井が高くなかったので、上に抜けていく音が心地よさを感じるには重要なのかなと思いました。同じくイビサの老舗であるPachaというクラブのメインフロアはBerghain同様に天井が高く、低音と広がりを感じる反響音のバランスがとてもよかったです。この時にまわしていたのはレジデントDJのMarcel Fengler。自分が最も楽しみにしていたDJです。ビートとシンセノイズで組んだ様なフレーズが絡むだけのシンプルなトラックを延々とロングミックスしつつバランスを変えてブレイクを作っている感じの素晴らしくストイックなプレイでした。ミニマルでシンプルなトラックでつないでいくにはまずハコ自体の音響システムがうまくチューニングされてるのが必須なのだなと思いました。
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Berghainは一度入場できたらそのあとは何回でも出入り自由なので、ひとしきり楽しんだあと明け方近くにホテルにもどって昼過ぎ頃に再挑戦。今度はメインフロアの上にあるPanorama Barのフロアへ。太陽が出ている時間だとこちらは窓のブラインドの隙間から陽がさし、退廃的で享楽的なフロアと相まって何ともいえない多幸感を醸し出します。昼過ぎの時間帯だとメインフロアよりもPanorama Barの方が幾分盛り上がっていました。ここでは何回か「チューインガムを持っているか?」と男の客に聞かれたのですが何かゲイのサインだったのでしょうか。今もってナゾです。またよくみるとPanorama Barのさらに上にも個室ラウンジのような小部屋がいくつかあり抱き合ってるカップルや普通に寝ている人などもいました。
この建物内はこれだけ退廃的で外界とのつながりを断ち切る演出をしているにも関わらずとても安全な感じがしました。泥酔したりドラッグをキメまくって絡んでくる人などは皆無で純粋に音と踊る事を楽しんでいる人が大多数でした。入場チェックの厳しさや音以外の事も含めた演出の徹底さ加減がもはやクラブ界のディズニーランドとでも言えるようなレベルに達していたと思います。